子供の遊びなどにも使われるレーザーポインターだが、レーザーを人の目に当ててはならないことは多くの人が知るところだろう。このほどギリシャで、そのレーザーが原因で網膜に穴が空いてしまった男児がいた。改めてレーザーポインターの使い方に『CBS News』『FOX59』『CNN』など多くのメディアが警鐘を鳴らしている。
先月21日、医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)』に9歳男児の左目に黄斑円孔が確認されたことが症例として発表された。この黄斑円孔とは、眼球の内側にある網膜のもっとも重要な黄斑部に穴が空く疾患である。
この病は、著しい視力低下に陥ってしまうという特徴がある。同誌によると9歳男児(名は明かされていない)が視力低下のため両親に連れられて眼科を訪れた。視力検査では右目が20/20(1.0)であったが、左目が20/100(0.2)と極端に低下していることが確認された。
医師が男児の左目を調べたところ、大きな黄斑円孔を発見した。さらにその近くに2か所、小さな損傷も確認されたという。医師が男児に話を聞いた結果、「緑色のレーザーポインターで遊んでいる最中に何度も繰り返し、レーザーを直視した」と話していることが同誌で明らかにされている。ちなみにレーザーポインターは男児の父親が街頭で購入したものだという。
残念なことに男児の黄斑円孔はかなりの大きさだったため、医師は手術ではなく慎重かつ地道な治療に取り組むことにした。ギリシャのテッサリア大学眼科助教授のソフィア・アンドロウディ氏(Sofia Androudi)によると、男児はレーザーの火傷によって光を吸収する神経が完全に損傷していると述べており、「手術をしたとしても少年の視力は回復することはないだろう」と『CNN』のインタビューで話している。
男児の治療が開始されてから18か月が経過しているが、視力は一向に回復する様子は見られないという。なお同誌では2010年、高性能のレーザーポインターをインターネットで購入した15歳の少年が、鏡越しにレーザーを浴びて目に重度の損傷を負ったという症例が報告されている。
ちなみに世界の多くの国民健康機関が、レーザーポインターの危険性を訴えている。光強度(最大出力)が1ミリワットを超えるものは多くの地域で制限されているものの、実際にはインターネット上で簡単に強力なレーザーポインターを購入することができるのだ。アメリカ食品医薬品局(FDA)では、このような現状に懸念を抱いており「アメリカでは出力が5ミリワット以下のものには規制がされておらず、緑色、もしくは青色、すみれ色のレーザーポインターは特に注意する必要がある。レーザーを直視することは太陽を直視することよりも危険である」と述べている。
日本ではレーザーポインターは消費生活用製品安全法で規制されており、JIS(日本工業規格)の基準に沿っていない1ミリワット以上のレーザーポインターは国内での製造販売、及び輸入販売は禁止されている。安全なものに対してはPSCマークが付いているとのことだ。
画像は『CBS News 2018年6月21日付「Laser pointer burns hole in young boy’s eye」(NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)
先月21日、医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine)』に9歳男児の左目に黄斑円孔が確認されたことが症例として発表された。この黄斑円孔とは、眼球の内側にある網膜のもっとも重要な黄斑部に穴が空く疾患である。
この病は、著しい視力低下に陥ってしまうという特徴がある。同誌によると9歳男児(名は明かされていない)が視力低下のため両親に連れられて眼科を訪れた。視力検査では右目が20/20(1.0)であったが、左目が20/100(0.2)と極端に低下していることが確認された。
医師が男児の左目を調べたところ、大きな黄斑円孔を発見した。さらにその近くに2か所、小さな損傷も確認されたという。医師が男児に話を聞いた結果、「緑色のレーザーポインターで遊んでいる最中に何度も繰り返し、レーザーを直視した」と話していることが同誌で明らかにされている。ちなみにレーザーポインターは男児の父親が街頭で購入したものだという。
残念なことに男児の黄斑円孔はかなりの大きさだったため、医師は手術ではなく慎重かつ地道な治療に取り組むことにした。ギリシャのテッサリア大学眼科助教授のソフィア・アンドロウディ氏(Sofia Androudi)によると、男児はレーザーの火傷によって光を吸収する神経が完全に損傷していると述べており、「手術をしたとしても少年の視力は回復することはないだろう」と『CNN』のインタビューで話している。
男児の治療が開始されてから18か月が経過しているが、視力は一向に回復する様子は見られないという。なお同誌では2010年、高性能のレーザーポインターをインターネットで購入した15歳の少年が、鏡越しにレーザーを浴びて目に重度の損傷を負ったという症例が報告されている。
ちなみに世界の多くの国民健康機関が、レーザーポインターの危険性を訴えている。光強度(最大出力)が1ミリワットを超えるものは多くの地域で制限されているものの、実際にはインターネット上で簡単に強力なレーザーポインターを購入することができるのだ。アメリカ食品医薬品局(FDA)では、このような現状に懸念を抱いており「アメリカでは出力が5ミリワット以下のものには規制がされておらず、緑色、もしくは青色、すみれ色のレーザーポインターは特に注意する必要がある。レーザーを直視することは太陽を直視することよりも危険である」と述べている。
日本ではレーザーポインターは消費生活用製品安全法で規制されており、JIS(日本工業規格)の基準に沿っていない1ミリワット以上のレーザーポインターは国内での製造販売、及び輸入販売は禁止されている。安全なものに対してはPSCマークが付いているとのことだ。
画像は『CBS News 2018年6月21日付「Laser pointer burns hole in young boy’s eye」(NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)