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【海外発!Breaking News】獣医学界に大きな進歩 脳に腫瘍ができた犬、3Dプリンター作成の人工骨を移植(カナダ)

TechinsightJapan 2018年10月4日 10時0分

3Dプリンターによる技術の進歩は目覚ましいものだが、半年ほど前にその3Dプリンター技術を使って作成された人工の頭蓋骨を小さな犬の頭に埋め込むという画期的な手術が行われていた。『The Star』『Fox 5 NY』などが伝えている。

米ペンシルベニア州ウィリアムズポートに住むダニエル・ディメックさんの飼い犬でメスのダックスフント“パッチーズ”(9歳)の手術が行われたのは、今年3月23日のことだった。

パッチーズは、頭蓋骨の上にオレンジサイズの腫瘍がのっかっている状態だった。ダニエルさんの話によると、腫瘍は何年も前からできており、パッチーズは家族に「リトル・ユニコーン」と呼ばれていたという。だが数か月前から腫瘍が急速に大きくなり放置すれば致命的とのことで、早急に対処しなければならなくなったようだ。

地元のかかりつけ獣医が、獣医プログラムで名が高いニューヨークのコーネル大学にいる小動物専門のガリーナ・ヘイズ獣医師を紹介、さらにカナダのオンタリオ州ゲルフ大学オンタリオ獣医カレッジのミッシェル・オブラク獣医師と合同で、北米では初の試みとされる3Dプリンター技術を使ってパッチーズの手術を請け負うことになった。

もともとゲルフ大学の獣医らは、犬の治療のために3Dプリンター技術を研究していた。これまではパッチーズのような腫瘍ができた犬への治療として、腫瘍と頭蓋骨の一部を除去し、カスタマイズされていないチタン製のメッシュをはめ込むという方法があったが、正確さに欠けコストも高く、手術時間も長くかかるため犬の負担が大きいという難点があった。そこで今回、3Dプリンターでチタン製人工骨をカスタムメイドする方法が試みられたのだが、この斬新な治療法は獣医学における大きな進歩をもたらした。

パッチーズの場合、70%の頭蓋骨を除去しなければならなかった。オブラク医師らはパッチーズの頭と腫瘍をCTで撮影し、そのデータをもとに複数の異なるソフトウェアプログラムを使用して綿密な手術プランを立てた後、オンタリオ州ロンドンにある医療専門の3D印刷会社に頭と腫瘍の実体モデルとチタン製の人工頭蓋骨の作成を依頼した。医師らはこの実体モデルを使用して手術のシミュレーションを行い、3月23日に本番となる手術に挑んだ。

手術には4時間ほどの時間を要したが、術後30分以内に麻酔から目が覚めたパッチーズは、トイレのために外に出ることもできるほど元気な様子を見せたようだ。愛犬を新たな試みに託すことにおいて、最初は大きな不安を抱えていたというダニエルさんは、手術が無事に成功してパッチーズの腫瘍が綺麗に切除されたことを喜んでおり「人間だけでなく動物も救える方法を研究することは、とても大切なことですから」と話している。

ところが手術の1週間後に、パッチーズは予想外のアクシデントに見舞われた。ひどい椎間板ヘルニアになり、後ろ足2本が麻痺状態になってしまったのである。

「元気にしていますが、車椅子があるけど使いたがらず、前足2本で引きずるように歩いています。それでも意外と速くて。こんな状態になっても、パッチーズは今でも家族間のボス的存在ですね。」

一方、今回の件で獣医学界における大きな前進を果たしたオブラク医師は、このように喜びを語った。

「今回の手術は、我々獣医師だけでなく、ソフトウェアのエンジニアや工業エンジニアらの協力があってこそ、順調に行われ大成功に至りました。ミリ単位の作業でミスの余地はほとんどありませんでしたが、2週間以内には人工骨ができあがるというスムーズさでした。この技術が今後も世界的に広まっていくことを期待したいと思います。」

画像は『The Star 2018年9月23日付「Ontario researchers use 3D-printing tech to replace part of dog’s skull」(THE CANADIAN PRESS)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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