今年4月に英ノッティンガムシャー州で起こった家庭内暴力の果ての殺人事件についての裁判が9月に行われ、妻を刺殺した夫には少なくとも19年の実刑判決が下された。ルーマニア国籍の夫は結婚後、妻を虐待し続けていたようで事件当日には殺害直前の瞬間を動画に収め、その後妻の母親に「すみません」と謝罪のメッセージを送っていたことが明らかになった。娘を亡くした母親は、「もっと早くに気付いていれば」と悲しみを露わにしている。『The Sun』『BBC News』『Nottinghamshire Live』などが伝えた。
ノッティンガムシャー州ベストウッド・ヴィレッジで今年の4月28日、3児の母フェイ・カリマンさん(30歳)が結婚して3年になるルーマニア人の夫マリアン(32歳)に顔や首、腹部などをキッチンナイフで刺されて殺害された。12か所の刺し傷のうち、致命傷となったのは心臓への一突きだった。
フェイさんとマリアンは2013年にパブで知り合い、2015年に結婚した。フェイさんには前のパートナーとの間に9歳と11歳になる娘がいたが、マリアンと結婚後に娘(2歳)をもうけた。しかし幸せだった結婚生活は長くは続かず、2016年のクリスマスイブに口論になったフェイさんを階段から投げ落とすなど、マリアンは妻に対してしばしば暴力を振るうようになった。
フェイさんの母ステラ・ウィリアムズさん(50歳)が、娘が受けている虐待に気付いたのは2017年4月のことだった。目に痣ができ、首に絞められたような痕があったことから娘を問い質すも、フェイさんは「いろいろ問題はあるけどなんとかやっている」と答えていたという。しかし今年の3月ついに2人は別居、フェイさんは新しく見つけた仕事をしながら子育てに励んでいた。
ところが4月28日、2歳の娘が自宅2階でTVを見ている間にやって来たマリアンとフェイさんは口論になった。マリアンの弁護士によると、マリアンは「もう子供に近付かないで」というフェイさんの言葉に逆上し、殴って暴言を吐き始めたようだ。その様子を自らスマホの動画に収めていたマリアンは「お前を殺してやる」と言い放った後、フェイさんにナイフを突き立てた。「妻を殺した」とマリアンからの通報を受けた警察と救急隊員がフェイさんの自宅に駆けつけると、リビングに血まみれで倒れているフェイさんを発見、午後11時半に現場で死亡が確認された。
現場から姿を消していたマリアンはその後、逮捕された。警察には「自分も死のうと思っていた」と供述したようだ。事件前後にマリアンは友人男性に数回電話をしており、午後11時20分頃の電話で「妻を殺した。自分も死ぬ」と聞かされた友人は、マリアンに自首を勧めて警察にも通報した。
ノッティンガム刑事法院で行われた裁判では、マリアンが撮影したフェイさんの最期の姿とみられる動画が公開された。マリアンの狂気に怯え「やめて!」と叫ぶフェイさんの姿が映し出されると、フェイさんの家族や友人は号泣した。最愛の娘を失ったステラさんは、悲しみをこのように語った。
「私には息子と娘が1人ずついますが、フェイは私にとって親友のような存在でもありました。最初、あの男のことを聞かされた時には利用されているのではと思ったのですが、会ってみればいい人ですぐに打ち解けました。ですがそれはあの男の裏の顔だったのです。2歳の子の父親であり、家族を守らねばならない立場のはずなのに、あの男は子供たちから母親を奪い、私たちから大切な娘を奪いました。娘は、これから味わうはずだった子供たちの成長を楽しむ機会を奪われてしまったのです。2歳の孫は『パパがママの頭を叩いたのを見た』と話しており、今後孫にどのような影響を与えるのかがとても不安です。あの男は娘を殺害した後、私に『子供たちをよろしくお願いします。ごめんなさい』とメッセージを送ってきました。娘の命を奪っておいて、あんなメッセージを送るなんて冷酷で邪悪以外の何物でもないと思いました。」
「娘の痣に気付いた時に、もっと早く別れろと言えば良かったと今更ながら思います。娘は、結婚生活がうまくいっていないことや、夫から虐待を受けていることを認めるのを恥じていたのでしょう。だから私にはほとんど何も話しませんでした。」
また、フェイさんの父ジョンさんもこのように話している。
「娘を失った悲しみは言葉では言い表せません。ステラ同様私たちの心には大きな穴が開いてしまいました。結婚生活に問題があると聞いていたが、『何とかやっている』という言葉を信じていました。娘を守ってやれず、失望させてしまったという気持ちでいっぱいです。」
結局、マリアンには最低でも19年の実刑判決が下された。判決を聞いたマリアンは表情一つ変えることもなく、フェイさんの家族らが座っている傍聴席に顔を向けることもなかった。判決後、ステラさんの現パートナーでフェイさんの継父グリン・ストリートさんは心情をこう明かしている。
「フェイへの虐待は徐々に激しさを増していたという状況でした。残忍で、冷酷で意図的な殺人です。残された3人の娘たちは、これから母親なしで生きていかねばなりません。もうフェイを取り戻すことはできませんが、この一件が家庭内虐待の果てに起こる悲劇の死を少しでも妨げる注意喚起になればと願っています。」
家庭内でどれほど激しい虐待が行われていても、被害者は表に出すことができない恐怖を抱えている。ベッキー・ホッジマン検察官は「多くの家族に影響を及ぼす家庭内暴力は、被害者がしばしば罠に陥りがちでその恐怖から周りに打ち明けることを困難に感じてしまうものです。ですが、被害者は決してひとりで抱え込むべきではありません」と述べており、家庭内暴力を受けている被害者には然るべき機関に相談するようにとアドバイスしている。
画像は『BBC News 2018年9月28日付「Killer husband filmed wife’s last moments before murder」(NOTTINGHAMSHIRE POLICE)』『The Sun 2018年10月14日付「‘IT WAS SO COLD’ Heartbroken mum reveals how daughter’s killer husband stabbed her through the heart then texted to say ‘sorry’」(Credit: MIRRORPIX)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)
ノッティンガムシャー州ベストウッド・ヴィレッジで今年の4月28日、3児の母フェイ・カリマンさん(30歳)が結婚して3年になるルーマニア人の夫マリアン(32歳)に顔や首、腹部などをキッチンナイフで刺されて殺害された。12か所の刺し傷のうち、致命傷となったのは心臓への一突きだった。
フェイさんとマリアンは2013年にパブで知り合い、2015年に結婚した。フェイさんには前のパートナーとの間に9歳と11歳になる娘がいたが、マリアンと結婚後に娘(2歳)をもうけた。しかし幸せだった結婚生活は長くは続かず、2016年のクリスマスイブに口論になったフェイさんを階段から投げ落とすなど、マリアンは妻に対してしばしば暴力を振るうようになった。
フェイさんの母ステラ・ウィリアムズさん(50歳)が、娘が受けている虐待に気付いたのは2017年4月のことだった。目に痣ができ、首に絞められたような痕があったことから娘を問い質すも、フェイさんは「いろいろ問題はあるけどなんとかやっている」と答えていたという。しかし今年の3月ついに2人は別居、フェイさんは新しく見つけた仕事をしながら子育てに励んでいた。
ところが4月28日、2歳の娘が自宅2階でTVを見ている間にやって来たマリアンとフェイさんは口論になった。マリアンの弁護士によると、マリアンは「もう子供に近付かないで」というフェイさんの言葉に逆上し、殴って暴言を吐き始めたようだ。その様子を自らスマホの動画に収めていたマリアンは「お前を殺してやる」と言い放った後、フェイさんにナイフを突き立てた。「妻を殺した」とマリアンからの通報を受けた警察と救急隊員がフェイさんの自宅に駆けつけると、リビングに血まみれで倒れているフェイさんを発見、午後11時半に現場で死亡が確認された。
現場から姿を消していたマリアンはその後、逮捕された。警察には「自分も死のうと思っていた」と供述したようだ。事件前後にマリアンは友人男性に数回電話をしており、午後11時20分頃の電話で「妻を殺した。自分も死ぬ」と聞かされた友人は、マリアンに自首を勧めて警察にも通報した。
ノッティンガム刑事法院で行われた裁判では、マリアンが撮影したフェイさんの最期の姿とみられる動画が公開された。マリアンの狂気に怯え「やめて!」と叫ぶフェイさんの姿が映し出されると、フェイさんの家族や友人は号泣した。最愛の娘を失ったステラさんは、悲しみをこのように語った。
「私には息子と娘が1人ずついますが、フェイは私にとって親友のような存在でもありました。最初、あの男のことを聞かされた時には利用されているのではと思ったのですが、会ってみればいい人ですぐに打ち解けました。ですがそれはあの男の裏の顔だったのです。2歳の子の父親であり、家族を守らねばならない立場のはずなのに、あの男は子供たちから母親を奪い、私たちから大切な娘を奪いました。娘は、これから味わうはずだった子供たちの成長を楽しむ機会を奪われてしまったのです。2歳の孫は『パパがママの頭を叩いたのを見た』と話しており、今後孫にどのような影響を与えるのかがとても不安です。あの男は娘を殺害した後、私に『子供たちをよろしくお願いします。ごめんなさい』とメッセージを送ってきました。娘の命を奪っておいて、あんなメッセージを送るなんて冷酷で邪悪以外の何物でもないと思いました。」
「娘の痣に気付いた時に、もっと早く別れろと言えば良かったと今更ながら思います。娘は、結婚生活がうまくいっていないことや、夫から虐待を受けていることを認めるのを恥じていたのでしょう。だから私にはほとんど何も話しませんでした。」
また、フェイさんの父ジョンさんもこのように話している。
「娘を失った悲しみは言葉では言い表せません。ステラ同様私たちの心には大きな穴が開いてしまいました。結婚生活に問題があると聞いていたが、『何とかやっている』という言葉を信じていました。娘を守ってやれず、失望させてしまったという気持ちでいっぱいです。」
結局、マリアンには最低でも19年の実刑判決が下された。判決を聞いたマリアンは表情一つ変えることもなく、フェイさんの家族らが座っている傍聴席に顔を向けることもなかった。判決後、ステラさんの現パートナーでフェイさんの継父グリン・ストリートさんは心情をこう明かしている。
「フェイへの虐待は徐々に激しさを増していたという状況でした。残忍で、冷酷で意図的な殺人です。残された3人の娘たちは、これから母親なしで生きていかねばなりません。もうフェイを取り戻すことはできませんが、この一件が家庭内虐待の果てに起こる悲劇の死を少しでも妨げる注意喚起になればと願っています。」
家庭内でどれほど激しい虐待が行われていても、被害者は表に出すことができない恐怖を抱えている。ベッキー・ホッジマン検察官は「多くの家族に影響を及ぼす家庭内暴力は、被害者がしばしば罠に陥りがちでその恐怖から周りに打ち明けることを困難に感じてしまうものです。ですが、被害者は決してひとりで抱え込むべきではありません」と述べており、家庭内暴力を受けている被害者には然るべき機関に相談するようにとアドバイスしている。
画像は『BBC News 2018年9月28日付「Killer husband filmed wife’s last moments before murder」(NOTTINGHAMSHIRE POLICE)』『The Sun 2018年10月14日付「‘IT WAS SO COLD’ Heartbroken mum reveals how daughter’s killer husband stabbed her through the heart then texted to say ‘sorry’」(Credit: MIRRORPIX)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)