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【エンタがビタミン♪】『アイヌと奄美』レジェンド安東ウメ子・朝崎郁恵から新進気鋭の若手まで39組が参加、魂のつながり感じる集大成アルバム

TechinsightJapan 2019年5月14日 18時15分

『アイヌと奄美』は、アイヌ音楽と奄美島唄という北と南に離れた地の伝承音楽を堪能出来るかつてないコンピレーション・アルバムと言えるだろう。アイヌ編は7名、奄美編は30名以上のレジェンドから若手アーティストまで参加しており世代による歌の違いも実感できる。コラボレーション編を加え全アーティスト39組71曲をCD5枚に収録、さらにブックレット56Pによる写真や解説をはじめ「座談会」の内容は貴重だ。

奄美唄者の朝崎郁恵(83)は奄美大島南部の島唄伝承の第一人者で、1997年にインディーズでリリースした『海美』の収録曲『おぼくり~ええうみ』を細野晴臣がラジオ番組で紹介して注目を集めた。

2002年にはUAがゲスト参加したアルバム『うたばうたゆん』でメジャーデビューしており、他にも坂本龍一や姫神、GONTITI、ウォン・ウィンツァン、LUNA SEAのSUGIZOなど幅広いジャンルのアーティストとコラボしている。2011年4月から始まったNHK BSプレミアム『新日本風土記』のテーマ曲『あはがり』も彼女によるものだ。

その朝崎郁恵が、2003年に奄美パーク「神唄祭」でアイヌ音楽のレジェンド・安東ウメ子(2004年7月に逝去)と共演して以来「アイヌと奄美は遠いけれど、とても古くから親戚だ」と思うようになった。彼女はブックレットのまえがきでその件に触れると「このCD BOXはウメ子さんがお空の上から繋げてくれたご縁によって産まれたものだと思います」と述べている。

奄美編にはJ-POPでも活躍する奄美出身の元ちとせや中孝介、NHK大河ドラマ『西郷どん』のメインテーマを担当した里アンナたちも参加しており、レジェンドから次世代へのつながりも感じられる。

奄美には歌を聴いて懐かしく思わせることが唄者にとって最高の歌い方であることを表す「なつかしゃや」という言葉がある。朝崎は時代とともに生活環境が良くなり歌い方も変化してその「なつかしゃや」が減ったという。

歌の上手下手ではなく現代の生活の中でそれを表現するのが難しくなっているからだ。様々な唄者を聴き比べることでそれを実感するのも本作ならではの楽しみ方だろう。

アイヌ編はムックリ(口琴)とウポポ(歌)の名手である安藤ウメ子やトンコリ奏者のOKIを中心に参加アーティストは7名と奄美に比べ少ない。

これはブックレットの「座談会」でも触れているが、アイヌの伝統的な音楽が一度失くなりかけ、若い人達が掘り起こしている段階にあるからだ。

日常でアイヌ音楽に接する機会はあまりないが、改めて聴き込むとその深さに驚かされる。民謡というよりは前衛音楽のようでもあり、ある時はいわゆる「ワールドミュージック」を思わせる。

コラボレーション編では奄美の朝崎郁恵とアイヌのrekpo、kapiw&apappo姉妹、OKIのコラボでさらに幻想的な世界観に引き込んでくれる。

偉大なる自然を敬い、歴史に翻弄されながら北の大地と南の島で歌われてきた音楽は、朝崎郁恵が「昔は大地がつながっていたのではないかと思うほどルーツがいっしょ」とたとえるように魂のつながりを感じる。

インターネットやスマホの普及で情報が溢れる時代となり、慌ただしい毎日が常態化している今、しばし耳を傾ければ忘れていた何かを思い出させてくれる。そんなアルバムが出来上がった。



(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)

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