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【海外発!Breaking News】米国で毎日1羽ずつ折り鶴を投稿する日本総領事 「祈り続けてくれてありがとう」感謝の声集まる<動画あり>

TechinsightJapan 2021年8月28日 21時2分

「折り鶴」―日本のこの伝統工芸には、折る人の祈りや願いが込められていることがある。今、米国で折り鶴を毎日折り続ける一人の日本人が静かに注目を集めている。折り人の名は稲垣久生氏。米シアトルの日本総領事館で総領事を務める人物だ。稲垣氏は毎日同じスタイルで1羽ずつ鶴を折り、その制作報告をInstagramに日々投稿し続けている。一見とてもシンプルな投稿のなかで、折り鶴の数は今月21日で365羽に達した。総領事という激務のなか、毎日欠かさず鶴を折り世界に発信し続けるその思いの源を稲垣氏が記者の取材にて語ってくれた。

稲垣久生氏が米ワシントン州シアトルにある日本国総領事館の総領事に着任したのは昨年8月末、折しも新型コロナウイルスによるパンデミックの最中だった。

稲垣氏はシアトルに到着した昨年8月22日から毎日1羽ずつ折り鶴を作成し始め、その報告を自身のInstagramアカウントに投稿している。どの投稿も短い動画で、その日に作った折り鶴を手にし「シアトルに到着して○日目です。皆さんの健康と平和を祈りながら、○羽目の折り鶴を折りました」と英語でメッセージを発信している。稲垣氏のInstagramアカウントには、ほぼ同じ構図で撮影された投稿がずらりと並ぶ。この真摯な取り組みにネット上では驚きの声があがっており、千羽鶴の文化について説明する海外メディアもあった。



稲垣氏が日本を発ったと思われる2020年8月21日の同氏のInstagramには、当時の羽田空港の動画と画像が収められている。パンデミック前は多くの人で賑わっていた空港内の閑散とした様子に、稲垣氏は「静かな羽田空港」と一言だけコメントを載せている。「静かな羽田空港」に立つ稲垣氏の胸中に去来したであろう思いは想像に難くない。稲垣氏に話を聞いた。

―さっそくですが、折り鶴を始めたきっかけを教えてください。
稲垣氏:在外公館長として、日本を代表してSNSにてメッセージを発信する上で、パンデミックにより本当に様々な苦労をされている皆さんにお見舞いを申し上げたいという気持ちで折り鶴を折り始めました。

―周囲からの反応はいかがでしたか?
稲垣氏:開始した時点で既にパンデミックの最中でしたので、周囲の方々ともインターネット上やSNSを通じてのみ繋がっており、直接お会いして反応をいただいた訳ではありませんが、オンライン上での反応は概ね、「Thank you(感謝)」や「Keep up(続けてください)」といったコメントが多かったです。



364羽目の折り鶴を報告した投稿には「あと1日だ!」と丸一年を待ちわびるコメントも届いており、365羽目の投稿には日本語で「おめでとう!」というコメントや「私たちの世界のために一年も祈り続けてくれてありがとう」などお祝いや感謝のコメントが多数寄せられた。なかには日本の千羽鶴という慣習を知ってか「あと635ですね!」という英語のコメントも見られた。だが総領事という重責、しかも着任1年目の1日目から日常業務と並行しつつ毎日同じ行為を続けることは決して容易ではなかったはずだ。



―折り鶴制作とInstagramでの発信を日々続けていく中でご苦労はありましたか?
稲垣氏:「苦労」というほどではありませんが、仕事を遅くまでして頭の働きが鈍ってしまい、動画を撮影して発信する際に折り鶴のカウントを間違えて(277の次を288としてしまったり、343の次の日に345としてしまったり)後日訂正をしたり、Instagram上のエラーにより発信できなくなってしまい、翌日に前日と併せて発信したりするなどのトラブルが稀にありました。

トラブルがあってもその翌日には丁寧に訂正を行うことも忘れない。このような地道で真摯な活動が知られるところとなり、折り鶴の数とInstagramの投稿回数が増えるにつれ、ユーザーからのコメントも増えていき、記念すべき2021年8月21日の投稿は8500回以上の再生回数を記録し、138のコメントが寄せられている。

稲垣氏:SNS上で反応をいただける方の中には、メッセージを送付してくださる方もいらっしゃるのですが、(私が)反応したいと思っていても、仕事で忙しくしているうちにそれができず、また元々のメッセージが消えてしまって反応できないこともあり、申し訳なく思っています。ですが、いただいたメッセージには必ず全て目を通すようにしています。

―この取り組みを始めて良かったと思える体験はありましたか?
稲垣氏:パンデミックにより、オンラインでかつ限られた方々としかお話が出来ないような状況が続いていたのですが、それでも道行く人で直接お会いしたことがない方が私の顔を覚えてくれて、マスクをしていても向こうから声をかけ挨拶をしてくれることがあり、うれしく思います。

シンプルだが稲垣氏の思いが伝わるこの活動には、「祈り続けてくれてありがとう」「頑張って」といった感謝や応援のコメントが英語で寄せられている。世界の健康と平和を祈り続けるという純粋な姿勢に多くの人は感銘を受けており、常に変化していくインターネットの世界で、変わらない投稿を続けることも多くの人に安心感を与えているのかもしれない。最後に稲垣氏に今後の活動について聞いてみた。

―今後も折り鶴制作とInstagramでの発信を続けていくにあたり、何か目標を立てていますか?
稲垣氏:私がシアトル総領事を離任する時まで、毎日欠かさず折り鶴を折り続けたいと考えています。



ひとりの日本人が世界の人々の健康と平和を願って始めたこの取り組み。異国の地にありながらも、折り鶴に込めたその祈りと願いの意味は人々の心にしかと届いている。

■在シアトル日本国総領事館のFacebook
https://www.facebook.com/JapanCons.Seattle
■在シアトル日本国総領事館のInstagram
https://www.instagram.com/cgj_of_japan_in_seattle/

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(TechinsightJapan編集部 iruy)

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