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【海外発!Breaking News】強皮症を患い両手の移植手術を受けた男性「新しい人生を与えてくれた」(スコットランド)

TechinsightJapan 2022年6月1日 22時0分

自己免疫疾患と言われている「強皮症」を患うスコットランド在住の男性が昨年12月、両手の移植手術を受けた。それは皮膚などが硬くなる原因不明の病で、男性は手がほとんど使えず激しい痛みに悩まされていたという。移植手術により痛みから解放された男性は「新しい人生を与えてくれたドナーとその家族に心から感謝している」と語っている。『BBC News』などが伝えた。

スコットランドのノースエアシャーで暮らすスティーブン・ギャラガーさん(Steven Gallagher、48)は13年前、自己免疫疾患と言われる「強皮症」と診断された。

それは皮膚が硬くなることを主な症状とする原因不明の病で、スティーブンさんは病気が発覚した時のことをこのように明かしている。

「最初は頬と鼻に異常な発疹ができて、それから右腕に痛みを感じるようになったんです。医師は当初、全身性エリテマトーデスによる皮膚ループス(狼に噛まれた痕のような赤い紅斑)やしびれや痛みなどが現れる手根管症候群だと考えていて手術も受けました。しかしその後も両腕の痛みが再発したことから専門医を紹介してもらい、強皮症であることが判明しました。」

「症状は鼻、口、手などに及んで、7年ほど前からは指が丸まって耐え難い痛みに悩まされるようになって…。私の手は閉じ始め、ただ2つの握りしめた拳(こぶし)の状態になり、その頃から両手で物を持ち上げる以外は何もできなくなったのです。何もつかめず、服を着るのも一苦労でした。」

そんなスティーブンさんはある日、グラスゴーの形成外科医で手外科医であるアンドリュー・ハート教授(Andrew Hart)から両手を移植する提案を受けた。

「手を移植するなんて…そんなことは宇宙の話だと最初は笑いました」と振り返ったスティーブンさんだが、ハート教授からさらに詳しい説明を受けた。さらに2016年に英国初の両手移植手術を主導したリーズ・ティーチング病院(Leeds Teaching Hospitals NHS Trust)の形成外科医サイモン・ケイ教授(Simon Kay)からも話を聞いた結果、手術に踏み切ることにしたそうだ。

「彼らはとても理解があり、私が両手を完全に失う可能性があることを率直に話してくれました。そして妻と話し合った結果、手術を受けることにしたんです。どうせ手を失うのなら、やるだけのことはやってみようと決心したのです。」

その後、移植に必要な心理学的評価などのプロセスを経たスティーブンさんは2021年12月中旬、12時間にも及ぶ移植手術を受けた。

リーズ・ティーチング病院の移植チームによると、強皮症の末期症状にある手の移植手術は世界初で、この手術にはさまざまな分野の専門家からなる30名がチームに参加したという。

同病院のケイ教授は次のように述べている。

「この手術はリーズとグラスゴーのメンバーが協力した大きなチームワークで行われました。手は毎日目にするものであり様々な用途に使われるため、他の臓器移植とは全く異なります。なので私たち医師と専門の臨床心理士は患者さんに移植の記憶が永久に残ることや、移植された手を身体が拒絶するリスクに心理的に対処できるよう評価と準備を行いました。」



手術後、約4週間をリーズ総合病院(Leeds General Infirmary)で過ごし、現在は理学療法と経過観察のためにグラスゴーの病院を定期的に訪れているというスティーブンさん。そんな彼は現在の様子についてこう語っている。

「手術はあっという間に終わって、目覚めた瞬間から手を動かすことができました。今はまだ大変なこともありますが、理学療法士や作業療法士のもとでリハビリすることで少しずつ良くなってきています。この手は本当に素晴らしく、私に新しい人生を与えてくれました。手術前は信じられないほどの痛み止めを飲んでいましたが、今は全く痛みがありません。」

「手術から5か月以上経過した今は犬をなでたり、蛇口をひねったり、コップに水を入れることができるようになりました。私はかつて屋根瓦を造る職人として働いていましたが、病気のため仕事を辞めざるを得ませんでした。ですがこの手をもっと動かせるようになった時は、何らかの仕事に戻りたいと考えています。移植を可能にしてくれたドナーとその家族には心から感謝しています。」

画像は『BBC News 2022年5月26日付「Man’s double hand transplant is ‘space-age stuff’」(PA MEDIA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)

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