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【海外発!Breaking News】行方不明の地主の息子に41年間成りすました男、“納得のいく人生”に終止符が打たれる(印)

TechinsightJapan 2022年7月17日 22時0分

このほどインドの裁判所が、41年間にわたり裕福な地主の息子になりすました男に7年の禁固刑を言い渡した。この男はニセの身分を利用し「成功した人生」を歩んだが、インド司法の判決によりその生活に終止符が打たれた。今回の事件は、裕福な身分と貧しい身分というインドの伝統的な制度の問題も露呈している。『Ulyces.co』『BBC』などが伝えた。

事の発端は1977年2月、印ビハール州ナーランダ地区ムルガワン村の裕福で有力な地主のひとり息子であるカンハイヤ・シンさんが学校から帰宅しなかったことに遡る。家族は警察に捜索願を出したが、カンハイヤさんを見つけることはできなかった。父のカメシュワール・シンさんはうつ病になってしまい、村のシャーマンを頼ることにした。するとシャーマンは「息子は生きていて、もうすぐ現れる」と告げたという。

そして1981年9月、カメシュワールさんの住む村からわずか15キロしか離れていないところに20代の男がやってきた。サフラン色の服を着て、歌を歌い、物乞いをしていたその男は、自分がムルガワン村で行方不明の有力者の息子であると住民に断言した。

行方不明の息子がいるという噂を聞いたカメシュワールさんは、自分の目で確かめようと近所の人たちとともにその村まで足を運んだ。そこで近所の人たちの誰もが「彼はカメシュワールさんの息子だ」と言ったため、男を自宅に連れて帰ったそうだ。しかし警察の記録によると、カメシュワールさんは「目が悪いため、彼がちゃんと見えない。私の息子だと言うのなら、連れて帰る」と伝えたという。

一方でカメシュワールさんの妻ラムサキー・デヴィさんは、男を見て「迷子の息子ではない」と断言したそうだ。息子のカンハイヤさんには「頭の左側に切り傷がある」というが、男にそのような傷はなかった。さらに彼は、カンハイヤさんの学校の先生を一人も知らなかったという。それでもカメシュワールさんは、息子が帰ってきたと確信していた。

そこで母親は警察に行き、虚偽の供述をした男をなりすましで通報した。男は逮捕されたものの、刑務所で1か月過ごしただけで保釈された。

しかし事件はこれで終わりではない。逮捕された男はその後40年以上にわたり、カンハイヤさんに成りすましてニセの身分を作り上げたのだ。そして男は選挙権を手に入れ、大学に進学、結婚もして“納得のいく人生”を築き上げることができた。さらにその間に亡くなったカメシュワールさんの財産の一部である37エーカー(約15万平方メートル)の土地を売ることまでしたという。

今回の事件の公式記録によると、詐欺を続けた男はなぜかインドの尊称である「Kanhaiya Ji」と記されていたそうだ。しかし身分詐称、詐欺、陰謀の罪で7年間の有罪判決言い渡した裁判官によると、彼の本名はダヤナンド・ゴサイン(Dayanand Gosain)で、ニセの自宅から約100キロ離れたジャムイ地区の村の出身であることが判明した。

ゴサインに関する情報は、他にも不明な点が多い。彼の公式文書には、それぞれ異なる生年月日が記載されている。高校時代の記録では1966年1月生まれだが、身分証明書には1960年2月、有権者証では1965年になっている。また2009年に食糧配給を受けるために政府が発行した身分証明書には、1964年生まれと書かれていた。

捜査員が確認できたのは、ゴサインがジャムイの農家に生まれた4人兄弟の末っ子で、生活のために歌いながら物乞いをし、1981年に家を出ていったということだった。しかもゴサインは、ニセの死亡診断書を取得して本来の身分を“抹殺”しようとした。警察の捜査で証明書の虚偽が確認されたため、裁判所はこれを却下している。

有罪判決の決定的な証拠となったのは、ゴサインがカメシュワールさんの娘ときょうだいであることを証明できるはずのDNA鑑定をいつも断っていたことだった。このことが警察の興味を引き、やがて真相が判明した。

最初の逮捕、保釈から40年間以上身元を偽り続けたゴサインに関する裁判は、少なくとも12人の裁判官によって審理された。2022年2月に裁判が開かれ、4月上旬に有罪判決が下された。そして6月に高等裁判所がこの判決を支持したのである。

この事件は、警察の無能さやインドの司法制度の遅さを露呈した。インドの裁判所では約5,000万件の事件が未解決であり、そのうち18万件以上は30年以上放置されているという。またインドの法律では、7年以上の行方不明者は死亡したとみなされる。

ちなみに実の息子であるカンハイヤ・シンさんの行方は、いまだ明らかになっていない。

画像は『BBC 2022年7月4日付「Bihar: Their son vanished - then an imposter took over for 41 years」(VISHAL ANAND)(RONNY SEN)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 H.R.)

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