目の前で野生動物の子どもがクマに襲われそうになっている―そんな状況を目の当たりにしたら、「可哀そう」「助けてあげたい」と思う人が多いのではないだろうか。カナダに住むある男性が車を運転していた際、クマに狙われたヘラジカの子を見つけて救助した。しかしこの行動が会社の規則に違反したとみなされ、解雇を言い渡されてしまった。仕事を失ったこの男性に、ネットユーザーからは「彼は正しいことをした」「自然の成り行きに任せるべき」など賛否両論の声があがっている。カナダのニュースメディア『CBC.ca』などが伝えた。
カナダ西部ブリティッシュ・コロンビア州フォート・ネルソン市在住で、燃料供給業者「AFD Petroleum Inc.(以下、AFD)」で働くマーク・スケージさん(Mark Skage)は先月6日、会社のトラックに乗って移動していた。いつも通りに車を走らせていたマークさんだったが、道端にヘラジカの子が1頭だけでいることに気付いた。生まれて間もないと見られるヘラジカの子の周辺には、母親らしき姿はなかった。他の車に轢かれそうになる様子を見たマークさんは、ヘラジカの子が道路に出てこないように誘導することにした。
車を道路脇に停め、車を降りるためにドアを開けると、ヘラジカの子が寄ってきて車に乗り込もうとした。驚いたマークさんがふと道路の反対側を見ると、1頭のアメリカクロクマが立っていたそうだ。「50ヤード(約45メートル)ほど離れた場所で、クマがヘラジカの子を待っていたんです。この子が車に乗ろうとするのを見て、『この場所に残しておくことはできない』と思い、覚悟を決めました」と話すマークさんは、ヘラジカの子を助手席に乗せた。
しばらくの間、母親らしきヘラジカが現れないか待ってみたが、一向に姿を見せなかったので、マークさんは助けを得るためにヘラジカの子を助手席に乗せたまま車を走らせ、途中で同州の自然保護サービス機関「Conservation Officer Service」に連絡を取った。そして数日後、マークさんが“ミスティ(Misty)”と名付けたヘラジカの子は、野生動物リハビリセンターへ送られ、野生に戻すことができるまで同センターで過ごすことになった。
アウトドア好きであるマークさんは、野生動物との基本的な接し方を理解しており、このような状況になった場合には介入せず、然るべき機関に連絡するか、自然の流れに任せるようにしているという。しかし今回、ヘラジカの子の危機を目の当たりにして自分の手で助けることを決断したマークさんは「この子は成長して、いずれたくさんの子どもを持つでしょう、その子どもたちも新しい命を宿します。今回は1頭のヘラジカの子を助けただけではなく、たくさんの命を救ったのです。私はそう信じています」と正しい判断であったと主張している。
なお、米アラスカ州漁業狩猟局(The Alaska Department of Fish and Game)によると、アラスカ州やカナダ北部では、多いときは4割ものヘラジカの子がアメリカクロクマに捕食されているという。
マークさんがヘラジカの子を救ったエピソードは、本来であれば心温まるイイ話として締めくくられるはずだったが、AFDがこの件に良い顔をしなかった。残念なことにマークさんは解雇されてしまったのだ。
AFDのデール・レイマー社長(Dale Reimer)は「マークさんは自然保護サービスへ連絡して対応してもらうことをせず、個人の判断で会社の車に無傷のヘラジカの子を乗せ、何時間も移動させました。これは従業員や他の道路利用者を危険に晒しただけでなく、ヘラジカに危険や苦痛を与える可能性もあります」と、マークさんの解雇についてコメントを公表した。
マークさんは過去に野生動物を扱った経験があり、コンサルタントとして複数の会社で独自の野生動物規約を作成する手伝いをしてきた。「道路や自然環境など、いかなる場所からでも野生動物を連れ去ることは法律に違反します。野生動物を所有したり、移動させることも法律違反となるのです」と明かすマークさんは、今回の自身が取った行動が法律違反になることは承知しており、「罰金も受け入れる」と述べている。しかし、まさか仕事を失うほどのこととは思いもしなかったであろう。
マークさんの行動が報道されると、「素晴らしい。彼は命を救ったんだ」「この状況であれば、彼は正しい行動を取ったと思う」「正しいことをしたのだから、罰せられるべきではないよ」「こんなことで仕事を失うなんて馬鹿げている」といった声が届く一方で、一部の人からは「お腹を空かせたクマも可哀そうだよね」「自然の成り行きに任せるべき」というコメントも寄せられている。
画像は『CBC.ca 2023年7月17日付「B.C. man fired from job after saving moose calf on the highway」(Submitted by Mark Skage)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)
カナダ西部ブリティッシュ・コロンビア州フォート・ネルソン市在住で、燃料供給業者「AFD Petroleum Inc.(以下、AFD)」で働くマーク・スケージさん(Mark Skage)は先月6日、会社のトラックに乗って移動していた。いつも通りに車を走らせていたマークさんだったが、道端にヘラジカの子が1頭だけでいることに気付いた。生まれて間もないと見られるヘラジカの子の周辺には、母親らしき姿はなかった。他の車に轢かれそうになる様子を見たマークさんは、ヘラジカの子が道路に出てこないように誘導することにした。
車を道路脇に停め、車を降りるためにドアを開けると、ヘラジカの子が寄ってきて車に乗り込もうとした。驚いたマークさんがふと道路の反対側を見ると、1頭のアメリカクロクマが立っていたそうだ。「50ヤード(約45メートル)ほど離れた場所で、クマがヘラジカの子を待っていたんです。この子が車に乗ろうとするのを見て、『この場所に残しておくことはできない』と思い、覚悟を決めました」と話すマークさんは、ヘラジカの子を助手席に乗せた。
しばらくの間、母親らしきヘラジカが現れないか待ってみたが、一向に姿を見せなかったので、マークさんは助けを得るためにヘラジカの子を助手席に乗せたまま車を走らせ、途中で同州の自然保護サービス機関「Conservation Officer Service」に連絡を取った。そして数日後、マークさんが“ミスティ(Misty)”と名付けたヘラジカの子は、野生動物リハビリセンターへ送られ、野生に戻すことができるまで同センターで過ごすことになった。
アウトドア好きであるマークさんは、野生動物との基本的な接し方を理解しており、このような状況になった場合には介入せず、然るべき機関に連絡するか、自然の流れに任せるようにしているという。しかし今回、ヘラジカの子の危機を目の当たりにして自分の手で助けることを決断したマークさんは「この子は成長して、いずれたくさんの子どもを持つでしょう、その子どもたちも新しい命を宿します。今回は1頭のヘラジカの子を助けただけではなく、たくさんの命を救ったのです。私はそう信じています」と正しい判断であったと主張している。
なお、米アラスカ州漁業狩猟局(The Alaska Department of Fish and Game)によると、アラスカ州やカナダ北部では、多いときは4割ものヘラジカの子がアメリカクロクマに捕食されているという。
マークさんがヘラジカの子を救ったエピソードは、本来であれば心温まるイイ話として締めくくられるはずだったが、AFDがこの件に良い顔をしなかった。残念なことにマークさんは解雇されてしまったのだ。
AFDのデール・レイマー社長(Dale Reimer)は「マークさんは自然保護サービスへ連絡して対応してもらうことをせず、個人の判断で会社の車に無傷のヘラジカの子を乗せ、何時間も移動させました。これは従業員や他の道路利用者を危険に晒しただけでなく、ヘラジカに危険や苦痛を与える可能性もあります」と、マークさんの解雇についてコメントを公表した。
マークさんは過去に野生動物を扱った経験があり、コンサルタントとして複数の会社で独自の野生動物規約を作成する手伝いをしてきた。「道路や自然環境など、いかなる場所からでも野生動物を連れ去ることは法律に違反します。野生動物を所有したり、移動させることも法律違反となるのです」と明かすマークさんは、今回の自身が取った行動が法律違反になることは承知しており、「罰金も受け入れる」と述べている。しかし、まさか仕事を失うほどのこととは思いもしなかったであろう。
マークさんの行動が報道されると、「素晴らしい。彼は命を救ったんだ」「この状況であれば、彼は正しい行動を取ったと思う」「正しいことをしたのだから、罰せられるべきではないよ」「こんなことで仕事を失うなんて馬鹿げている」といった声が届く一方で、一部の人からは「お腹を空かせたクマも可哀そうだよね」「自然の成り行きに任せるべき」というコメントも寄せられている。
画像は『CBC.ca 2023年7月17日付「B.C. man fired from job after saving moose calf on the highway」(Submitted by Mark Skage)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)