子宮移植を受けた女性が、体外授精により男児を出産したというニュースがアメリカから届いた。生まれつき子宮を持たない「ロキタンスキー症候群」を抱えている女性は、亡くなったドナーから子宮の提供を受け、移植手術と体外授精、ハイリスク妊娠などを経て、5月下旬に予定帝王切開で男児を出産した。米ニュースメディア『Good Morning America』などが伝えている。
米アラバマ州にあるアラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham、以下UAB)は7月24日、臨床試験以外で子宮移植を受けた女性が、体外授精により男児を出産したことを発表した。
これまでにアメリカで行われた3件の子宮移植はいずれも臨床研究試験によるもので、母親となったマロリーさん(Mallory)は臨床試験以外の子宮移植により出産した最初の患者となり、男児はUAB総合移植研究所とUAB医学部の子宮移植プログラムにおいて初めて誕生した赤ちゃんとなった。
マロリーさんが生まれつき子宮を持たない「ロキタンスキー症候群(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndrome、先天性子宮欠損症とも呼ばれる)」と診断されたのは、17歳の時だった。この疾患は女性の約4500人に1人の割合で発症すると言われるが、マロリーさんは当時の心境について「病気が発覚して以来、子供を身ごもることはできないことを理解して自分の中で折り合いをつけてきましたが、私にはいつも何かが欠けているように感じていました」と明かした。
母親になるためには代理母出産、または養子縁組を行うしか方法がなかったというマロリーさん。その後、姉妹が代理母となり、夫ニック(Nick)さんとの間に長女を授かった。そして、その時に初めて子宮移植の存在を知り、自分にも妊娠できる可能性があることに希望を持ったという。
のちにUAB医学部の子宮移植プログラムへの参加が決まったマロリーさんは、アラバマ州で臓器の寄付を受け付けて必要な人に提供する活動を行う非営利団体「Legacy of Hope」を通じて亡くなったドナーから子宮の提供を受け、移植手術と体外授精、ハイリスク妊娠などを経て、今年5月下旬に予定帝王切開で男児を出産した。
かつては医学的に不可能と思われていたこの出産について、UAB医学部の上級副学部長であるアヌパム・アガルワル博士(Anupam Agarwal)は次のように述べている。
「子宮移植、妊娠、出産という全てのプロセスが完了するまで、18か月近くかかりました。長く、困難でありながらも刺激的な経験を私たちのケアチームに託してくれたマロリーさん夫妻に感激しています。私たちの目標は、健康上の理由で妊娠、出産を経験したくてもできない女性たちのためにこのプログラムを日常的なものにすることです。これを実現するため、ここには専門家や研究チームが揃っているのです。」
また、UAB総合移植研究所の所長であるペイジ・ポレット博士(Paige Porrett)はこう話している。
「マロリーさんの出産は、本人や家族にとって、UABのチームにとって、医療現場にとっても信じられないような成果です。世界中では、生殖年齢にある5%の女性が生まれつき子宮がなかったり、子宮摘出手術などで妊娠ができないという『子宮性不妊症』に悩んでいます。そんな女性にとって、子宮移植は唯一の医学的治療法なのです。しかし患者のほとんどは実現できないのが現状で、その安全性と有効性にもかかわらず、子宮移植は現在までに世界中で100例ほどしか行われていません。UABでは、自分の子供を産むという選択肢を持ったことのない女性にとって安全で簡単なものにすることに全力を注いでいるのです。」
子宮移植により夢の妊娠、出産を経験したマロリーさんは、4人家族になった喜びと感謝の気持ちをこのように語った。
「子宮性不妊症で妊娠できない場合でも、家族を増やす方法はいろいろありますが、私がやるべきことは子宮移植だと思いました。UABのプログラムによって私は妊娠と出産を経験し、最終的に4人家族になることができました。辛いことがあっても妊娠できるチャンスは今だけだと分かっていたし、この経験ができることがどれだけ幸運なことか分かっていたので頑張って乗り越えようと思いました。娘が私のお腹にいる赤ちゃんの存在を感じることができたのは本当に特別なことで、このような素晴らしい経験ができたことに感謝の気持ちでいっぱいです。」
画像は『Good Morning America 2023年7月25日付「Couple welcome 1st baby born from a uterus transplant outside clinical trial」(Courtesy of Mallory)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)
米アラバマ州にあるアラバマ大学バーミンガム校(University of Alabama at Birmingham、以下UAB)は7月24日、臨床試験以外で子宮移植を受けた女性が、体外授精により男児を出産したことを発表した。
これまでにアメリカで行われた3件の子宮移植はいずれも臨床研究試験によるもので、母親となったマロリーさん(Mallory)は臨床試験以外の子宮移植により出産した最初の患者となり、男児はUAB総合移植研究所とUAB医学部の子宮移植プログラムにおいて初めて誕生した赤ちゃんとなった。
マロリーさんが生まれつき子宮を持たない「ロキタンスキー症候群(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser syndrome、先天性子宮欠損症とも呼ばれる)」と診断されたのは、17歳の時だった。この疾患は女性の約4500人に1人の割合で発症すると言われるが、マロリーさんは当時の心境について「病気が発覚して以来、子供を身ごもることはできないことを理解して自分の中で折り合いをつけてきましたが、私にはいつも何かが欠けているように感じていました」と明かした。
母親になるためには代理母出産、または養子縁組を行うしか方法がなかったというマロリーさん。その後、姉妹が代理母となり、夫ニック(Nick)さんとの間に長女を授かった。そして、その時に初めて子宮移植の存在を知り、自分にも妊娠できる可能性があることに希望を持ったという。
のちにUAB医学部の子宮移植プログラムへの参加が決まったマロリーさんは、アラバマ州で臓器の寄付を受け付けて必要な人に提供する活動を行う非営利団体「Legacy of Hope」を通じて亡くなったドナーから子宮の提供を受け、移植手術と体外授精、ハイリスク妊娠などを経て、今年5月下旬に予定帝王切開で男児を出産した。
かつては医学的に不可能と思われていたこの出産について、UAB医学部の上級副学部長であるアヌパム・アガルワル博士(Anupam Agarwal)は次のように述べている。
「子宮移植、妊娠、出産という全てのプロセスが完了するまで、18か月近くかかりました。長く、困難でありながらも刺激的な経験を私たちのケアチームに託してくれたマロリーさん夫妻に感激しています。私たちの目標は、健康上の理由で妊娠、出産を経験したくてもできない女性たちのためにこのプログラムを日常的なものにすることです。これを実現するため、ここには専門家や研究チームが揃っているのです。」
また、UAB総合移植研究所の所長であるペイジ・ポレット博士(Paige Porrett)はこう話している。
「マロリーさんの出産は、本人や家族にとって、UABのチームにとって、医療現場にとっても信じられないような成果です。世界中では、生殖年齢にある5%の女性が生まれつき子宮がなかったり、子宮摘出手術などで妊娠ができないという『子宮性不妊症』に悩んでいます。そんな女性にとって、子宮移植は唯一の医学的治療法なのです。しかし患者のほとんどは実現できないのが現状で、その安全性と有効性にもかかわらず、子宮移植は現在までに世界中で100例ほどしか行われていません。UABでは、自分の子供を産むという選択肢を持ったことのない女性にとって安全で簡単なものにすることに全力を注いでいるのです。」
子宮移植により夢の妊娠、出産を経験したマロリーさんは、4人家族になった喜びと感謝の気持ちをこのように語った。
「子宮性不妊症で妊娠できない場合でも、家族を増やす方法はいろいろありますが、私がやるべきことは子宮移植だと思いました。UABのプログラムによって私は妊娠と出産を経験し、最終的に4人家族になることができました。辛いことがあっても妊娠できるチャンスは今だけだと分かっていたし、この経験ができることがどれだけ幸運なことか分かっていたので頑張って乗り越えようと思いました。娘が私のお腹にいる赤ちゃんの存在を感じることができたのは本当に特別なことで、このような素晴らしい経験ができたことに感謝の気持ちでいっぱいです。」
画像は『Good Morning America 2023年7月25日付「Couple welcome 1st baby born from a uterus transplant outside clinical trial」(Courtesy of Mallory)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)