南アフリカ・ダーバン南部のブラフ(Bluff)にあるショッピングセンターの駐車場で白昼に強盗事件が発生した。被害者は女性ひとりで、対する犯人は男複数人という悪質極まりない犯罪であった。「犯罪が多すぎて、たとえ強盗事件であっても警察は捜査などしてくれない」ことが当たり前の南アフリカでは、被害者は泣き寝入りをするしかないという。しかし、この女性は諦めることをしなかった。強盗犯を追いかけて車で跳ね飛ばし、奪われたバッグを取り戻したのだ。「人殺しになってまで生きていたくはなかった」という女性がそれでもバッグを取り戻すために車を走らせた理由とは? 南アフリカのニュースメディア『News24』他多くのメディアが注目した。
現地時間9月27日午前11時前、ショッピングセンター駐車場ゲートを監視しているカメラには、買い物を終えてゲートから出る女性の車が映っている。そこに2人の男が走り寄ってきた。女性が駐車券を機械に入れるために車を停め、窓を全開にしたところ、男2人が車の前後から近づき、運転席の扉を開けると1人の男が女性のバッグを奪って逃走した。もう1人の男は助手席に近づき車を奪おうとしたが、後ろにいた車が女性を助けるために男を轢こうと迫って来たために諦め、待機していた車に乗り込んで逃走した。
南アフリカでは盗まれた物が戻ってくることはおろか、犯人が捕まることもほぼあり得ない。警察も事件が多すぎて捜査することはまずない。このままだと被害者は泣き寝入りになるのだが、この女性は違った。
男が逃げた方向にはガソリンスタンドがあり、そこを監視しているカメラがこの続きを捉えていた。画面右側から現れた男はそのまま車道に向かって走っていたが、女性が運転する車に追いつかれ、跳ね飛ばされた。男は2メートルほど飛ばされて車道に転がり、女性の車は段差で一瞬宙に浮いたがそのまま走っていった。さらに男の仲間が乗り込んだ車も、転がっている男を見放して逃走した。
その後の動画で男は無事生きていることがわかったが、歩行が困難と見え、横たわって悶えている。この動画が投稿されるやいなや、多くの人が女性の勇気を褒めたたえた。男には「当然の報いである」というコメントや、女性が無事であるか心配するコメントが多く見られた。
英雄と称えられた女性はサンディ=リー・ウォード(Sandy-Lee Ward)さん(43)で、実は彼女の悲劇はカメラに映っている部分だけではなかった。ネットニュースサイト『News24』の取材に対し、ウォードさんは、駐車場のゲートで近づいて来た男が彼女の顔を殴り、首のゴールドネックレスをつかんで車から引きずり降ろそうとしたと明かした。ウォードさんがシートベルトをしていたため、男は彼女の顔を殴り続けシートベルトを外そうとしたがうまくいかず、彼女のバッグを掴むと走っていったのだった。
ウォードさんはその直前に銀行に行ったものの、確認書類を受け取りに行っただけで現金を引き出しておらず、現金はわずかしか持っていなかったという。しかし、奪われたバッグの中に運転免許証や銀行の書類、家の鍵、身分証明書、携帯電話など、ウォードさんの“生活の全て”が入っていることに気づいたそうだ。また、銀行の書類には自宅の住所などの詳細な情報が書かれていたので、その情報を入手した強盗たちが家にやってくるのではないかと危惧し、バッグを取り返そうと追いかけたのだという。
「まるで神が私の足の上に足を置いてくださったようでした。駐車場のゲートが開いていないことにも気づかずに、私は車のアクセルを踏んで車を進ませたのです。とにかくバッグを取り返すことしか考えていませんでした。私は泣きながら『神よ、あのバッグには私の大切なものが入っています。強盗たちにそれを奪うことが許されるはずがありません』って祈っていたの。また、通りにいる誰かが彼を捕まえてくれないかとも願っていたわ。家の鍵と銀行口座の書類を取り戻そうと彼を追いかけたんです」と当時の思いを述べた。
ウォードさんの車が男にぶつかったとき、その衝撃でバッグは男の手から離れて草の上に落ち、ガソリンスタンドの係員がバッグを拾って「よくやった、よくやったよ」と言いながら彼女に渡したとのこと。その後、近くの店まで車を走らせていると、警察車両がウォードさんを追いかけてきた。ウォードさんが車を停めると、警官に「大丈夫か」と聞かれたため強盗に遭ったことを報告、すると警官は男を捕まえに戻っていった。
これで家に帰れると思ったウォードさんだったが、悲劇はこれで終わらなかった。今度は先程とは違う男たちが乗ったトヨタの大型車フォーチュナーがウォードさんを追いかけてきたのだ。
「強盗は2台の車に乗っていて、私の車を奪おうとしていたのだと思います。トヨタのフォーチュナーから降りてきた男たちが、周りの人たちに向かって、『この女を追い詰めろ!』と叫び始めたのです」と、当時の恐怖を語る。事情を知らない人たちが迫ってくる中、ウォードさんは逃げ出した。この様子に気づいた1台の車が、ウォードさんとフォーチュナーの間に割って入り、彼女はなんとかその場を離れ、無事帰宅したとのこと。助けてくれた車は、ウォードさんが家に着くまでついてきてくれたそうで、「(車の男性は)私を『助けるためにそこにいた』と言ってくれました」とウォードさんは感謝で涙ぐんだ。
「人を殺したくなかったんです。人殺しになってまで生きていたくはなかった。彼を殺さずに済んで本当に良かった。私はただバッグを取り返すことしか考えていませんでした」と彼女は主張している。28歳の強盗は現場で逮捕され、この件は強盗事件として警察が捜査を開始し、ウォードさんは警察から事情聴取を受けている。
Cellphone snatcher chased and knocked off by a lady driving a Toyota Tazz after being robbed off her cellphone in Bluff Durban, KZN. pic.twitter.com/RWQQZd8KIJ— CrimeInSA (@sa_crime) September 28, 2023
画像は『IOL 2023年9月30日付「‘Tazz’ trends on X, memes flood the internet after Bluff woman rams into alleged bag thief」』『News24 2023年9月29日付「WATCH | 'The Lord put his foot on mine and I kept going' – Tazz driver who rammed into Durban robber」』『FOX 11 Los Angeles 2023年9月3日付「‘We just want laws to protect us’: California jewelry store wants change after robbery scare」』『FOX 11 Los Angeles 2022年8月2日付「‘He shot my arm off’: Elderly store owner opens fire on would-be robber in Norco」』『Intelligence Bureau SA 2018年10月4日付Facebook「ATTEMPTED ROBBERY- HIJACKING MORNINGSIDE. JHB..GP. ON WEDNESDAY. KEEP VIGILANT..」』『New York Post 2023年2月14日付「Wild video shows hero LA clerk grab robber’s knife and chase him away」(Amaya’s Market)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)
現地時間9月27日午前11時前、ショッピングセンター駐車場ゲートを監視しているカメラには、買い物を終えてゲートから出る女性の車が映っている。そこに2人の男が走り寄ってきた。女性が駐車券を機械に入れるために車を停め、窓を全開にしたところ、男2人が車の前後から近づき、運転席の扉を開けると1人の男が女性のバッグを奪って逃走した。もう1人の男は助手席に近づき車を奪おうとしたが、後ろにいた車が女性を助けるために男を轢こうと迫って来たために諦め、待機していた車に乗り込んで逃走した。
南アフリカでは盗まれた物が戻ってくることはおろか、犯人が捕まることもほぼあり得ない。警察も事件が多すぎて捜査することはまずない。このままだと被害者は泣き寝入りになるのだが、この女性は違った。
男が逃げた方向にはガソリンスタンドがあり、そこを監視しているカメラがこの続きを捉えていた。画面右側から現れた男はそのまま車道に向かって走っていたが、女性が運転する車に追いつかれ、跳ね飛ばされた。男は2メートルほど飛ばされて車道に転がり、女性の車は段差で一瞬宙に浮いたがそのまま走っていった。さらに男の仲間が乗り込んだ車も、転がっている男を見放して逃走した。
その後の動画で男は無事生きていることがわかったが、歩行が困難と見え、横たわって悶えている。この動画が投稿されるやいなや、多くの人が女性の勇気を褒めたたえた。男には「当然の報いである」というコメントや、女性が無事であるか心配するコメントが多く見られた。
英雄と称えられた女性はサンディ=リー・ウォード(Sandy-Lee Ward)さん(43)で、実は彼女の悲劇はカメラに映っている部分だけではなかった。ネットニュースサイト『News24』の取材に対し、ウォードさんは、駐車場のゲートで近づいて来た男が彼女の顔を殴り、首のゴールドネックレスをつかんで車から引きずり降ろそうとしたと明かした。ウォードさんがシートベルトをしていたため、男は彼女の顔を殴り続けシートベルトを外そうとしたがうまくいかず、彼女のバッグを掴むと走っていったのだった。
ウォードさんはその直前に銀行に行ったものの、確認書類を受け取りに行っただけで現金を引き出しておらず、現金はわずかしか持っていなかったという。しかし、奪われたバッグの中に運転免許証や銀行の書類、家の鍵、身分証明書、携帯電話など、ウォードさんの“生活の全て”が入っていることに気づいたそうだ。また、銀行の書類には自宅の住所などの詳細な情報が書かれていたので、その情報を入手した強盗たちが家にやってくるのではないかと危惧し、バッグを取り返そうと追いかけたのだという。
「まるで神が私の足の上に足を置いてくださったようでした。駐車場のゲートが開いていないことにも気づかずに、私は車のアクセルを踏んで車を進ませたのです。とにかくバッグを取り返すことしか考えていませんでした。私は泣きながら『神よ、あのバッグには私の大切なものが入っています。強盗たちにそれを奪うことが許されるはずがありません』って祈っていたの。また、通りにいる誰かが彼を捕まえてくれないかとも願っていたわ。家の鍵と銀行口座の書類を取り戻そうと彼を追いかけたんです」と当時の思いを述べた。
ウォードさんの車が男にぶつかったとき、その衝撃でバッグは男の手から離れて草の上に落ち、ガソリンスタンドの係員がバッグを拾って「よくやった、よくやったよ」と言いながら彼女に渡したとのこと。その後、近くの店まで車を走らせていると、警察車両がウォードさんを追いかけてきた。ウォードさんが車を停めると、警官に「大丈夫か」と聞かれたため強盗に遭ったことを報告、すると警官は男を捕まえに戻っていった。
これで家に帰れると思ったウォードさんだったが、悲劇はこれで終わらなかった。今度は先程とは違う男たちが乗ったトヨタの大型車フォーチュナーがウォードさんを追いかけてきたのだ。
「強盗は2台の車に乗っていて、私の車を奪おうとしていたのだと思います。トヨタのフォーチュナーから降りてきた男たちが、周りの人たちに向かって、『この女を追い詰めろ!』と叫び始めたのです」と、当時の恐怖を語る。事情を知らない人たちが迫ってくる中、ウォードさんは逃げ出した。この様子に気づいた1台の車が、ウォードさんとフォーチュナーの間に割って入り、彼女はなんとかその場を離れ、無事帰宅したとのこと。助けてくれた車は、ウォードさんが家に着くまでついてきてくれたそうで、「(車の男性は)私を『助けるためにそこにいた』と言ってくれました」とウォードさんは感謝で涙ぐんだ。
「人を殺したくなかったんです。人殺しになってまで生きていたくはなかった。彼を殺さずに済んで本当に良かった。私はただバッグを取り返すことしか考えていませんでした」と彼女は主張している。28歳の強盗は現場で逮捕され、この件は強盗事件として警察が捜査を開始し、ウォードさんは警察から事情聴取を受けている。
Cellphone snatcher chased and knocked off by a lady driving a Toyota Tazz after being robbed off her cellphone in Bluff Durban, KZN. pic.twitter.com/RWQQZd8KIJ— CrimeInSA (@sa_crime) September 28, 2023
画像は『IOL 2023年9月30日付「‘Tazz’ trends on X, memes flood the internet after Bluff woman rams into alleged bag thief」』『News24 2023年9月29日付「WATCH | 'The Lord put his foot on mine and I kept going' – Tazz driver who rammed into Durban robber」』『FOX 11 Los Angeles 2023年9月3日付「‘We just want laws to protect us’: California jewelry store wants change after robbery scare」』『FOX 11 Los Angeles 2022年8月2日付「‘He shot my arm off’: Elderly store owner opens fire on would-be robber in Norco」』『Intelligence Bureau SA 2018年10月4日付Facebook「ATTEMPTED ROBBERY- HIJACKING MORNINGSIDE. JHB..GP. ON WEDNESDAY. KEEP VIGILANT..」』『New York Post 2023年2月14日付「Wild video shows hero LA clerk grab robber’s knife and chase him away」(Amaya’s Market)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 FLYNN)