アメリカ合衆国国務省が今年6月に発表した人身売買における年次報告書では、タイが2年連続で特別調査の対象となる「Tier2」に格付けされた。そのタイを今年9月に旅行した男女5人が、配車アプリで依頼した運転手の不審な行動に気づき、「人身売買されるのでは」と感じて車から慌てて逃げ出したという。しかしその後、警察の捜査で意外な真実が明らかになった。マレーシアのニュースメディア『WORLD OF BUZZ』などが伝えている。
マレーシア在住のアンドリュー・トンさん(Andrew Tong)が9月5日、Facebookにタイを旅行した際のハプニングを投稿したところ、多くの関心を集めた。投稿には、タイのバンコクで「危うく売られそうになった」と綴られていた。
アンドリューさんは、自分を含めた男性2人と女性3人の5人でタイを訪れた。そして旅行最終日の9月4日、配車サービスアプリ「inDrive」で5人一緒に乗れるように「いすゞ自動車」のピックアップ・トラック「D-MAX」を依頼し、マレーシアに帰国するためドンムアン国際空港に向かうことにした。
ピックアップ・トラックは午後7時にアンドリューさんたちを迎えるためホテルに到着したが、この時、アンドリューさんは運転手がスーツケースを荷台に積むのを手伝わなかったことに少し違和感があったという。そして車に乗り込んだ5人は、窓ガラスに外から車内が見えないほど黒いスモークフィルムが貼られていることに気づいた。
出発した直後、運転手の男性は誰かに電話をかけ始めると、5人に「どこから来たのか?」と尋ねた。アンドリューさんはあまり深く考えずに「マレーシアからです」と答えたそうだ。その後も運転手はタイ語で電話の相手と会話を続けていたが、幸いにもアンドリューさんはタイ語が理解できるため、その会話を注意深く聞いていた。
すると運転手が「今、男性2人と女性3人のマレーシアからの旅行者が乗っている」と5人について電話で報告していることが分かった。さらにアンドリューさんたちはナビゲーションアプリの「Waze」で空港までは30分で到着することを確認していたが、運転手のGPSシステムには到着までの時間が50分と表示されており、5人は「別の場所に連れていかれるのでは?」と思い始めた。
タイでは人身売買が横行していることもあり、身の危険を感じた5人はバンコク市内の繁華街に差しかかった際、運転手に「トイレに行きたいから車を停めて欲しい」と頼んだ。しかし、運転手から「この付近には車を停める場所がない」と断られてしまったという。運転手は「この先のガソリンスタンドなら大丈夫」と伝えたが、アンドリューさんはこの付近にガソリンスタンドがないことに気づいた。
アンドリューさんたちはこのままでは自分たちが人身売買業者に身売りされると思い、道路が渋滞している間に外へと飛び出し、荷台のスーツケースを鷲掴みしてその場から逃げた。この時、運転手は5人が逃げようとしているにもかかわらず、追いかけて料金の支払いを求めることもなかったという。
運転手から逃げ切ったアンドリューさんたちは、飛行機の出発時間が迫っていたことから警察に通報することはなかった。その代わり、Facebookに運転手の顔写真を添えて投稿し、人身売買の被害に遭わないように「配車アプリではなく地元のタクシーを使うように」と他の人に向けて警告した。
その後、アンドリューさんの投稿からタイ観光局と観光警察が調査に乗り出すこととなり、問題の運転手の身元を突き止めて取り調べを行った。そして調査の結果、アンドリューさんたち5人を恐怖に陥れた運転手の行動は「全て誤解だった」と、タイ観光局が9月9日に公表した。
台湾を拠点とするニュースメディア『Gutzy Asia』によると、運転手の男性に犯罪歴はなく、現在は医療機器サービスの会社に勤務し、副業で運転手をしているという。この運転手は、「inDrive」では同社が指定するGPSアプリケーションを使用することが義務付けられていると話しており、そのルートに従って走行しなければならないそうだ。
そのためアンドリューさんが使用した「Waze」とルートが異なっていたため、到着時間に差が出たというのだ。また「トイレに行きたい」と言われた時のことについても、交通量の多い狭い道路ということもあり、停車は不可能だったという。
さらに、電話をしていた相手は彼のいとこであり、いとこが自動車事故の保険の請求や裁判についての問題を抱えていたため、無下に電話を切ることができなかったと説明している。運転手の男性は最終的に身の潔白が証明されたが、今回は5人を迎えてから長時間電話で会話をしていたことで処分を受けてしまったそうだ。
なおその後、アンドリューさんが誤解を認めたといったことは報じられていないが、9月11日付の『中国報(China Press)』が伝えたところによると、アンドリューさんが「タイ観光局が公表した調査結果について、最終的に誤解だったとしても、警察が運転手だけの話を聞いて判断を下すのは不公平であり、関係者全員の証言を聞いてから、再度結論を出してほしい」と望んでいることや、「タイ警察の捜査に喜んで協力したい」と話したそうだ。
画像は『The Rakyat Post 2023年9月8日付「Pigging Out: Malaysian Tourists Narrowly Escape Shady E-Hailing Driver In Bangkok」(Pix: Facebook/China Press)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)
マレーシア在住のアンドリュー・トンさん(Andrew Tong)が9月5日、Facebookにタイを旅行した際のハプニングを投稿したところ、多くの関心を集めた。投稿には、タイのバンコクで「危うく売られそうになった」と綴られていた。
アンドリューさんは、自分を含めた男性2人と女性3人の5人でタイを訪れた。そして旅行最終日の9月4日、配車サービスアプリ「inDrive」で5人一緒に乗れるように「いすゞ自動車」のピックアップ・トラック「D-MAX」を依頼し、マレーシアに帰国するためドンムアン国際空港に向かうことにした。
ピックアップ・トラックは午後7時にアンドリューさんたちを迎えるためホテルに到着したが、この時、アンドリューさんは運転手がスーツケースを荷台に積むのを手伝わなかったことに少し違和感があったという。そして車に乗り込んだ5人は、窓ガラスに外から車内が見えないほど黒いスモークフィルムが貼られていることに気づいた。
出発した直後、運転手の男性は誰かに電話をかけ始めると、5人に「どこから来たのか?」と尋ねた。アンドリューさんはあまり深く考えずに「マレーシアからです」と答えたそうだ。その後も運転手はタイ語で電話の相手と会話を続けていたが、幸いにもアンドリューさんはタイ語が理解できるため、その会話を注意深く聞いていた。
すると運転手が「今、男性2人と女性3人のマレーシアからの旅行者が乗っている」と5人について電話で報告していることが分かった。さらにアンドリューさんたちはナビゲーションアプリの「Waze」で空港までは30分で到着することを確認していたが、運転手のGPSシステムには到着までの時間が50分と表示されており、5人は「別の場所に連れていかれるのでは?」と思い始めた。
タイでは人身売買が横行していることもあり、身の危険を感じた5人はバンコク市内の繁華街に差しかかった際、運転手に「トイレに行きたいから車を停めて欲しい」と頼んだ。しかし、運転手から「この付近には車を停める場所がない」と断られてしまったという。運転手は「この先のガソリンスタンドなら大丈夫」と伝えたが、アンドリューさんはこの付近にガソリンスタンドがないことに気づいた。
アンドリューさんたちはこのままでは自分たちが人身売買業者に身売りされると思い、道路が渋滞している間に外へと飛び出し、荷台のスーツケースを鷲掴みしてその場から逃げた。この時、運転手は5人が逃げようとしているにもかかわらず、追いかけて料金の支払いを求めることもなかったという。
運転手から逃げ切ったアンドリューさんたちは、飛行機の出発時間が迫っていたことから警察に通報することはなかった。その代わり、Facebookに運転手の顔写真を添えて投稿し、人身売買の被害に遭わないように「配車アプリではなく地元のタクシーを使うように」と他の人に向けて警告した。
その後、アンドリューさんの投稿からタイ観光局と観光警察が調査に乗り出すこととなり、問題の運転手の身元を突き止めて取り調べを行った。そして調査の結果、アンドリューさんたち5人を恐怖に陥れた運転手の行動は「全て誤解だった」と、タイ観光局が9月9日に公表した。
台湾を拠点とするニュースメディア『Gutzy Asia』によると、運転手の男性に犯罪歴はなく、現在は医療機器サービスの会社に勤務し、副業で運転手をしているという。この運転手は、「inDrive」では同社が指定するGPSアプリケーションを使用することが義務付けられていると話しており、そのルートに従って走行しなければならないそうだ。
そのためアンドリューさんが使用した「Waze」とルートが異なっていたため、到着時間に差が出たというのだ。また「トイレに行きたい」と言われた時のことについても、交通量の多い狭い道路ということもあり、停車は不可能だったという。
さらに、電話をしていた相手は彼のいとこであり、いとこが自動車事故の保険の請求や裁判についての問題を抱えていたため、無下に電話を切ることができなかったと説明している。運転手の男性は最終的に身の潔白が証明されたが、今回は5人を迎えてから長時間電話で会話をしていたことで処分を受けてしまったそうだ。
なおその後、アンドリューさんが誤解を認めたといったことは報じられていないが、9月11日付の『中国報(China Press)』が伝えたところによると、アンドリューさんが「タイ観光局が公表した調査結果について、最終的に誤解だったとしても、警察が運転手だけの話を聞いて判断を下すのは不公平であり、関係者全員の証言を聞いてから、再度結論を出してほしい」と望んでいることや、「タイ警察の捜査に喜んで協力したい」と話したそうだ。
画像は『The Rakyat Post 2023年9月8日付「Pigging Out: Malaysian Tourists Narrowly Escape Shady E-Hailing Driver In Bangkok」(Pix: Facebook/China Press)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)