場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を意味するテレワーク
政府が景気対策の一つとして推進している在宅勤務(テレワーク)。以前より制度としては存在していましたが、一部の大手企業で導入される程度で、中小企業には浸透していないのが実情です。
テレワーク(「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語)とは、インターネットやクラウドサービスなど、さまざまな情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことを意味しています。働く場所によって、在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3つに分類できるとされています。では、実際にテレワークを導入するメリットについて、企業と働く側の双方から考えてみます。
企業には、生産性向上や優秀な人材確保といったメリットが
企業側のメリットとしては、主に下記のようなことが考えられます。
1、非常災害時やパンデミック(感染症流行)が発生した際にも事業の継続性が確保できる。
2、通勤減少やオフィスの省力化による電力量削減でCO2排出量を減らし、環境への負荷が軽減できる。
3、どこでも仕事ができる環境をつくることで、顧客への迅速な対応が可能となり、生産性が向上する。
4、家族と過ごす時間や、自己啓発に使う時間が増える環境を用意することで、従業員の満足度と企業への帰属意識が高まり、企業イメージにも好影響を与える。
5、育児や介護など従業員が働きやすい環境を用意することで、雇用確保・雇用維持につながり、結果として優秀な社員が確保できる。
6、退職した高齢者や通勤困難者、地方在住者などの雇用が可能となり、新たな雇用創出で労働力が確保できる。
労働者のメリットも多いが、導入にあたり課題も
一方、働く側から見た際のメリットはどうでしょう。
1、育児や介護等など家庭の事情により働くことができない状況にあっても、仕事と両立することができる。
2、在宅で働くことで、通勤時間が削減できる。
3、配偶者の転勤などがあっても、会社を退職せずに働くことができる。
4、病気や怪我などで通勤が困難な状況であっても、在宅で働くことができる。
5、職場の場所に関係なく、住みたい場所を選択することができる。
しかし、こうしたメリットがある一方で、「テレワークに適した仕事がない」「情報漏洩が心配」「業務進行が難しい」「社内のコミュニケーションに支障が生じるのでは」とのデメリットを感じている企業が多いのも事実です。
一足飛びにテレワークの制度を設けるだけではなく、対象従業員が出てきたところから、自社でのテレワークという働き方を考え、導入をしていく方法もあるでしょう。実際に制度を導入しても、活用されなければ意味はありません。自社にマッチしたテレワーク制度を考えていきたいものです。
(成澤 紀美/社会保険労務士)