恐怖症の心理的仕組みを理解する
人間は、もともと「人に好かれたい」「愛されたい」という欲求を持っています。しかし、好かれたい、愛されたいとの思いが強く、人に嫌われることを極度に恐れるあまり、生きづらく感じてしまう人が増えているそうです。そうした人々を「嫌われ恐怖症」と呼ぶようですが、では、どうすれば嫌われ恐怖症を改善することができるのでしょうか。
人に嫌われるのが怖いという人は、嫌われる怖さにばかり焦点を当ててしまいます。ですが、同時に人を嫌っているということも知る必要があります。自分が人を嫌っているとの自覚はなかなか持てませんが、よくよく心の奥を見ていけばわかるはずです。この自覚がなければ、恐怖症の症状に翻弄されてしまいます。そこで、改善策の一つ目は、「自分が人を嫌うから、人から嫌われていると感じて、嫌われないようにしている」という心理的仕組みを知ることにあります。
次に、嫌われ恐怖症の多くは、子どものころに「嫌われたと思った」という記憶を持っています。その相手は、ほとんどが親です。もっとも、この記憶は勘違いによる誤解も含まれ、実際、親に嫌われているわけではないにも関わらず、子どものころの自分がそう思い込んでしまったということです。子どもは親に「好かれたい、愛されたい」と考えています。
しかし、子ども心に「自分が親に好かれていない」「愛されていない」と感じる場面に遭遇した際、「嫌われた」という思い込みをつくってしまいます。親の気持ちなど計れるはずもなく、その思い込みは成長しても残り続けます。やがて、親以外の相手からも嫌われた記憶を積み重ねていくうち、「私は嫌われている」と感じて苦しくなります。同時に、自分の心を守るために「嫌われないようにしなくてはならない」と思い込み、極度の恐怖症に発展していきます。
「嫌われた」記憶が、成長に役立ったという側面も否定できない
感情が絡んでいるため、思い込みは強固で、意識を変えていくのは難しいと思われますが、もし、少しでも改善に役立つ方法として試すならば、そのトラウマ的記憶のメリットを考えてみることです。子ども心に自分が人から嫌われたと感じた人は、その後、人間関係に気を遣うようになったかもしれません。また、人に頼らないしっかり者になったかもしれません。その上で、今が存在します。
ですから、「嫌われたと思った」記憶が、人間的な成長に役立ったという側面も否定できません。大人と呼べる年齢になってまで、過去の記憶にとらわれる必要はないのです。これからは、嫌われ恐怖症を改善する決断をし、次の心の成長に向かう段階にきています。
上記のように、改善策の二つ目は、メリットに注目することで、トラウマ的記憶を手放すことです。また、「嫌われ恐怖症を改善する」と固く決断し、勇気を持って未来に一歩を踏み出す覚悟をするということも重要な要素です。「嫌われ恐怖症」に対して無策でいることは、その場で足踏みをしているようなものです。小さくてもいいので、勇気を持って新たな一歩を踏み出しましょう。
(安藤 はま子/心理カウンセラー)