最有力候補地は、東京、大阪、沖縄。市場規模は約1.5兆円程度
秋の臨時国会で「IR推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)」の成立が見込まれています。IRとは、Integrated Resortの略で日本語では「統合型リゾート」と言い、カジノ施設を中心とする総合型の大型リゾートのことを指します。
ゴールドマン・サックスは、4つのカジノ施設を作った場合、市場規模は1.5兆円になると試算しています。また、日本のキャピタル&イノベーション社では、カジノ施設が3~4か所の場合、市場規模は1.2兆円、10か所の場合は、2.2兆円と予想しています。
7月26日付日本経済新聞によれば、「政府は東京五輪を開催する2020年までに全国3か所前後で、カジノの開設を認める検討に入った。大阪、沖縄などが候補となる見通しだ」としており、上記予測に従えば、その市場規模は1.2兆円〜1.5兆円程度となりそうです。
報道等によれば、カジノの最有力候補地は、東京のお台場(青海)、大阪此花区の夢洲(ゆめしま、臨海部の人口島)、そして国際観光拠点を目指す沖縄です。もっとも、東京では、お台場へのアクセスが良くないとして築地市場跡地などが対抗馬に上がってきているようです。また、舛添都知事がカジノ誘致に消極的なこともあり、横浜市が有力視されつつあるとも言われています。いずれも大型クルーズ客船に対応可能なエリアです。
商業地の地価は周辺の土地よりも2割近く高くなると予想
では、こうして盛り上がっているカジノ誘致は、不動産価格にどのような影響を及ぼすのでしょうか?ひとつの施設の完成が大きく地価上昇に影響を与えた直近の例として、東京スカイツリーのケースを見てみましょう。同じ墨田区内で、スカイツリーによる影響が顕著であった押上の商業地の公示地価の上昇率と、相対的に影響を受けなかった両国を比べます。前者は、2010年1月の公示地価を底として、スカイツリー開業(2012年5月)の2年ほど前から上昇に転じています。一方、後者は2012年の公示まで下落が続き、2013年に横ばい、2014年になってようやく上昇しました。結果、2010年から2014年までの上昇率は、押上で15.5%、両国でマイナス1.8%となりました。大雑把な議論ではありますが、スカイツリー効果による地価上昇は、17%強であったといえるでしょう。
カジノの1施設当たりの予想市場規模は前記の通り3~4千億円、スカイツリーの売上げは326億円ですので、市場規模インパクトはカジノの方が10倍程度大きいといえます。「もしカジノ候補地が押上と同程度の経済規模であれば」という前提ですが、仮にお台場を例に取れば、既に観光地化しており、かつビジネス地区でもあり多数の訪問者が存在しますので、相対的なインパクトは、スカイツリーの例と同等と見てもそう大きく間違ってはいないでしょう。
カジノ誘致は、誘致地区が既に成熟した都市エリアであったとしても、その集客効果、経済波及効果により、商業地については間違いなく地価が上昇するでしょうし、その水準は、影響の及ばない周辺の土地よりも2割近く高くなることが考えられます。もし、成熟度の低いエリアであれば、これを上回る上昇率となるでしょう。ただし、いずれも面的な広がりは見られないと思われます。
一方で、住宅地については、カジノがあることの直接のメリットは、交通インフラが整備される場合などに限られ、かえって治安不安や住環境の悪化を懸念する住民が増えそうであり、地価に関してほぼ中立となるものと予想します。
(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー)