非製造業の設備投資が増えた他、製造業でもプラスに
財務省が9月1日に発表した法人企業統計調査によると、2014年の4月から6月の企業の設備投資は8兆5617億円で、前年同期比3.0%のプラスとなったそうです。増加は5期連続。商業施設やオフィスビルの開発などで非製造業の設備投資が増えた他、健康栄養食品や飲料関連の生産能力増強などに伴い、製造業でもプラスとなったことが主な要因としています。財務省は調査結果について「駆け込み需要の反動の影響が見られるものの、景気は緩やかな回復基調が続いているという経済全体の傾向を反映している」とコメントしています。
これを受けて、9月2日の日経平均株価は192円のプラスとなりました。1月から3月の伸びである前年同期比7.4%からは大きく落ち込んでいますが、株式市場は好意的に受け止めています。かつては民間設備投資は経済成長のエンジンであり、投資が投資を呼び、経済成長に結びつくといわれた時代がありました。しかしながらバブル以降は過大な設備投資が重荷となることを教訓とした会社も多いかと思います。設備投資は確かに経済成長を牽引しますが、かつてほどではないという見解もあります。
内需拡大に基づく設備投資としてはまだ弱い印象
景気動向を読み取るためには様々な指標がありますが、8月13日には第一四半期の国内総生産(1次速報値)が発表されています。それによると4月から6月の国内総生産は前の3か月間と比べると実質でマイナス1.7%、年率に換算するとマイナス6.8%とかなり大きな落ち込みとなりました。また、6月27日に総務省が公表した5月の家計調査でも、1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は物価変動を除いた実質で前月比3.1%減少しています。6月30日に国交省が公表した5月の住宅着工戸数も前月比3.7%の減少でした。
家計調査や住宅着工数が足元の消費増税の影響を受けるのに対し、企業の設備投資は先を見込んでいます。そのため、両者の間でプラスマイナスが逆転していても不思議ではありません。とはいえ、これまでの4期の投資設備の増加理由を見ると、自動車など中心に円安によって輸出環境が改善したこと、新型車に対応するための設備投資が増えたこと、消費税増税にともなう駆け込み需要、大型商業施設の新規出店や空港ターミナルビルの拡張によるためと分析されています。つまり、円安や外需、特に自動車関連の投資や施設整備のための設備投資が中心で、内需拡大に基づく設備投資としてはまだ弱い印象です。生産能力増強のための投資が、もう少し多岐にわたる分野で増えるようになるまでは注視が必要なのではないでしょうか。
(西谷 俊広/公認会計士)