労働基準法では、残業を原則認めていない
世間では、「ブラック企業」という言葉が流行しています。ブラック企業とは、社員を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む企業のことを指します。特に残業代を支給しない等、労働基準法違反の会社が報道されています。その中の一つとして、最近、世間を騒がせたのが「たかの友梨」問題でしょう。
報道によれば、定休日通りに休めず、休日出勤への手当もなし、有給休暇を取得できず、残業代の未払いがあるといった問題が浮上。女性従業員から相談を受けたブラック企業対策ユニオンが8月22日に記者会見を行おうとしたところ、それを知った社長が21日に店舗を訪れ、女性を問い詰めたというものです。その時に録音されていた音声が公開されるなど、世間の注目を浴びることになりました。
では、普段、何気なく聞く残業とは何なのでしょうか。よくある勘違いですが、そもそも労働者の働くルールである労働基準法では、残業(法定時間外労働や法定休日労働)を原則認めていません。1日8時間、1週間で40時間(業種によって異なる場合がある)以上働かせてはならないと規定しているのです。
ただし、例外規定として、「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署へ届け出ることによって法定外時間労働をさせても罰されない(専門的には免罰効果と言います)ようになります。企業によっては残業が当たり前になっており、この原則が忘れられがちですが、法律上における残業はあくまで例外的にしか認められていません。
残業を例外的に認める規定が「36(サブロク)協定」
「36協定」を締結するためには、社員の中から選出された(投票や挙手等)従業員過半数代表と、経営者が書面により協定を締結します。その後、協定を労働基準監督署へ提出することにより、初めて法律的な効果が表れます。労働者と経営者が協議し、双方が過重労働にならないように協力、話し合いをするというのが法の趣旨です。労働者はできるだけ短い時間を、経営者側はできるだけ長い時間をと対立するのが昔の構図でしたが、現在では、その関係が逆になっている会社もあります。社員は残業をして手当が欲し、経営者はできるだけ残業代を払いたくない等がその理由です。
「36協定」では、1カ月45時間まで、1年で360時間まで時間外労働の限度時間を定めることができます。また、限度時間を超えて時間外労働を行う特別の事情が予想される場合には、最大年6回までは上記を超えた時間を定めることができます(特別条項付協定といいます)。締結している会社は必ず社内に掲示し、どの労働者でも見られるようになっているはずです。ルールを知ることで、労働時間に対する意識が変わるかもしれません。ぜひ一度、自分の会社の「36協定」がどうなっているか、確認してみてください。
(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)