度数が強い、角膜が薄い場合はレーシックで治しにくい
現在、近視矯正手術で主役のLASIK(レーシック)。近視をレーザーで精度良く治すことができ、有名芸能人やスポーツ選手、眼科教授・准教授の医師たちも受けたことから一般にも広く普及し、その恩恵を受けた患者は数多くいます。日本では、すでに100万眼以上の件数が実施されました。ただ、これだけ大量だと、問題のない患者が大部分を占めたとしても、稀にありうる不都合な症状を感じる人も一部存在し、その一部の声が反映されて「レーシックは良くない」という誤った解釈がなされています。
しかし実際、度数の強くない、軽・中程度の近視矯正なら現在でもレーシックで十分治せますが、度数が強い、角膜が薄い、角膜形状に異常がある場合は治しにくい現状があるのも事実です。
近視度数の強い患者に適している「ICL挿入手術」
このような患者の近視矯正に適しているのが「フェイキックIOL挿入手術」、すなわち「ICL挿入手術」です。イメージとしては、眼内に取り換え不要のソフトコンタクトレンズを入れる方法です。日本では2010年に厚生労働省の認可が下り、2011年には近視のみならず乱視矯正ICLも認可されました。そして、2014年には「穴あきICL」も認可が下り、患者の茶色目(虹彩)に穴を開ける必要がなくなり、さらに楽に負担少なく受けられる手術となったのです。
国内初のICL手術は、1997年、北里大眼科の清水教授によって執刀成功され、すでに17年の歴史があります。メリットは、術後の結果に不満・合併症があれば、レンズを取り出し元の状態に戻すことができること。近視度数の強い患者をレーシックで治すと、角膜をたくさん削る必要があり、難易度が高くなります。その結果、術後誤差が大きくなったり、近視が再発したりして結果が芳しくない場合があります。ICLは度数が強くても軽くても、一枚のレンズを目に入れる同じ手術方法のため、難易度に差が生じることはありません。
手術費用が高額だが、保険で給付金が支給されるケースも
デメリットとしては、レーシックと異なり、目の中を触る手術のため、眼内炎など目の中の不具合が稀に起きる可能性があることです。しかし、ICLは白内障手術に似た方法であり、国内のICL認定医は白内障手術に熟知した眼科医師のため安心して受けられる施設がほとんどでしょう。また、手術費用が両眼で60万~100万円と高額であることもデメリットです。しかし、民間の生命保険会社の給付金が支給されるケースもあり、加入されている患者は保険会社に確認してみると良いでしょう。
世界的に普及し、日本でも広まりつつあるICL手術。近視・乱視を治したい人は、ICL認定眼科で、適応があるか否か気軽に相談してみることをお勧めします。
(田川 考作/眼科医)