ひとり親家庭の支援については、まずは公的支援の充実が必要
配偶者との離婚や死別、または未婚で出産し、ひとりで子どもを育てる「ひとり親家庭」は、社会的・経済的な面で負担が大きいと言われています。このような家庭に対し、公的な支援を拡大する動きが拡大している中、九州の銀行が人材サービス会社と提携し、母子家庭への支援を目的としたローンを始めたことが話題となっています。とはいえ、ローンは利息も必要であり、貸出限度額もあるため、ひとり親家庭の支援については、まずは公的支援の充実が必要なところです。
そこで、現在どのような支援制度があるか、簡単に整理してみます。なお、以下の制度は筆者の事務所がある佐賀市を基準としており、地方自治体によっては名称や内容、制度の有無が異なる場合があります。
まず、経済的な支援としては、児童手当、児童扶養手当、児童育成手当といった各種手当金、また、地方税や所得税の寡婦(夫)控除制度、死別の場合の国民年金又は厚生年金の遺族年金というものもあります。支出に関する点では、医療費助成や保育料の減免・小中学校の就学援助、高等学校の授業料減免制度など、子どもの教育・健康にかかる費用について助成制度が設けられ、さらに公共交通機関の割引制度などもあります。そして、各種奨学金や母子寡婦福祉資金貸付制度による教育資金の貸付制度など、返済の必要はありますが、各種貸付の制度も設けられています。
仕事と育児の両立を応援するサービスや制度も
特に母子家庭については、女性の就労環境が依然として厳しく、子どもを育てていく十分な収入が得られないケースも多く見られます。そのような場合に、少しでも就職に有利な技能を身につけるための公共職業訓練制度や、訓練受講費用の助成となる自立支援教育訓練給付金という制度もあります。
もちろん経済面以外でも、ひとりで仕事と育児を両立することは大きな負担です。この件については、各地自体によって違いはあるものの、放課後児童クラブや保育園の一時保育・休日保育、あるいは親が病気になった場合等の、公的な一時託児制度やホームヘルプサービスなどが設けられています。
各地方自治体にはひとり親家庭支援の相談窓口が設けられていますので、詳細はお住まいの市町村の窓口にご確認ください。ちなみに、佐賀市ではひとり親家庭への支援制度をまとめたブックレットを作成し配付しています。このようなわかりやすい案内を、各自治体でとりまとめることも必要でしょう。
未来の担い手である子どもたちの成長を社会全体で支えるべき
そのほかにも、離婚・未婚での出産の場合には、もうひとりの親に養育費の支払いを求めることもできます。ただし、平成18年時点の厚生労働省の統計では、残念なことに養育費がきちんと支払われているのは19%にすぎず、多くの場合は養育費の支払い(とりきめ)がないか、一部しか支払われていないという状況も明らかになっています。これについては履行勧告や強制執行など、支払確保の手段がいくつか設けられていますが、相手方が所在不明であったり、収入・資産がない場合には回収が困難であり、まだまだ十分であるとは言えません。
子どもは次の世代の担い手であり、社会全体が子育てを支えていくことが、あるべき理念であって、そのような中で冒頭に述べたような民間の支援制度が設けられることは望ましいといえます。とはいえ、民間の支援に頼ることなく、行政機関による公的支援を充実させるとともに、離婚・未婚の場合のように他方の親がいる場合には、一方だけに負担をかけるのではなく、たとえ憎しみあって別れたとしても、子どものためには必要な対応をすることが求められていると言えるでしょう。
(半田 望/弁護士)