日本にとって、円高と円安、どちらが望ましい?
円安が止まりません。2014年の9月が終わりそうな時点で108円台の後半です。2012年の10月は79円台、2013年の10月1日でも100円には到達していませんでしたから、随分と回復してきた感があります。2007年には120円を超えていた時期もありますので、この調子で円安が続くかもしれません。
さて、つい先日まで「円高で輸出企業の業績悪化が止まらない」ということで、日本経団連などの経済団体が円高の是正を要請していました。ところが、円高が収まって円安になると、今度は「燃料や原材料など輸入品の値段が上がるので、輸入企業の業績が悪化する」「庶民の生活に影響が出る」などと騒がれています。日本にとって、円高と円安、どちらが望ましいのかと疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
輸出企業は為替の影響を受けないように海外進出を進めてきた
一般的に円高の場合には輸出企業に不利となり、円安の場合は輸入企業に不利となります。日本はもともと製造業中心で、日本国内で生産したものを海外に輸出して発展してきました。そのため、「円高になると輸出企業は業績が悪化する」というのが昔からのロジックでした。その一方で、資源のない日本は大量の資源を海外からの輸入に頼っています。円安になると同じ数量を購入するのでもたくさんの円が必要となりますから、「円安になると輸入企業は業績が悪化する」というのも真理なわけです。
日本の輸出企業はこれまでにも何度か激しい円高に直面しており、その過程で為替の影響を受けないようにと海外進出を進めてきました。自動車や電機の分野で典型的ですが、大手メーカーは海外に工場を構えて生産しています。海外で生産する目的は、安い労働力や消費地に近いことももちろんですが、円高の影響を回避することにもあり、実際、かつてほど円高の影響はないといわれています。
円安は、良い側面もあれば悪い側面もある
一方、デフレ経済が定着して久しい日本経済ですが、モノの値段というのは需給が変わらなくても為替が変動することで変わります。これまで低価格をウリにしてきた小売店は、円安になると仕入れ値が高くなりますから値段を上げざるをえないところも出てくるでしょう。
円高だと海外旅行はしやすくなり、日本企業は海外投資をしやすくなります。逆に円安だと外国人は日本に来やすいでしょうし、外国企業は対日投資をしやすいでしょう。また、日本人が海外でモノを購入するよりも、外国人が日本に来てくれた方が国内の消費は伸びます。同様に、外国人が日本に投資してくれた方が、国内の建設需要や雇用が増えると考えられます。
その反面、円安で日本企業の株式が割安になれば、買収対象になるでしょうし、日本企業にとっては脅威です。結局のところ、日本経済にとって円安は、良い側面もあれば悪い側面もあるということです。
(西谷 俊広/公認会計士)