「クラブ」に対する風営法の規制について照度規制を提言
先ごろ、警察庁の有識者会議が、若者などがダンスや音楽を楽しむ「クラブ」に対する風営法の規制について、今後は、店内の明るさを基準にして行うなどの提言をまとめました。
戦後間もなく制定された現在の風営法は、客にダンスをさせる店舗については深夜営業を禁じています。当時、ダンスホールが売春など犯罪の温床と考えられていたことが関係しているようです。しかし、バーや居酒屋については深夜営業を行えるのに、ダンスを行うというだけで営業規制がかかるのは不合理だという声が高まっていました。過去には同じように時代にそぐわない規制だとして、ビリヤードや社交ダンスが風営法の規制から外されたこともあります。このような流れの中で、今回の有識者会議では、風営法の規制を、ダンスをさせるかどうかではなく、店内の明るさを基準にして行うべきだと提言されたわけです。こうした規制は照度規制とも呼ばれています。
今回の提言では、具体的に、店内の明るさが10ルクス以下の場合には現在のクラブと同様午前0時以降の深夜営業を禁止する一方で、10ルクスを超える場合には深夜営業も可能となります。ちなみに、10ルクスは、映画館の休憩時間中の明るさ程度のようです。
照度を基準として規制をかけることには一定の合理性がある
さて、今回の提言をどう評価すれば良いでしょうか。「ダンス=風紀を乱すもの」というレッテルは明らかに時代錯誤でしょうから、ダンスを風営法の規制から外すことは合理的だと思います。その上で、そもそもなぜ風営法の深夜営業の規制が必要かといえば、犯罪の誘発を防ぐなどして子どもや若者を守ったり、健全な風紀を維持するためだと思います。
この観点でいえば、やはり閉ざされた暗い場所では、一般によからぬことが起りやすい、よからぬことを行いやすいという経験則はあると思います。たとえば、違法薬物の売買など違法な取引、わいせつ行為、暴力行為などです。そのため、照度(明るさ)を基準として深夜営業の規制をかけることには一定の合理性があると思います。現在の風営法も照度を基準とした規制をかけています。
何を基準にしても「いたちごっこ」を完全に回避するのは難しい
もちろん、照度を基準とすることについては、不明確だとか、経営者側によって簡単に店内の明るさは変えられるので規制の実効性があるのか、といった意見はあると思います。他方、現在のクラブは大半が10ルクス以下なので、改正後も深夜営業ができないことに変わりがないというクラブ側の反論も聞こえてきそうです。
しかし、何を規制基準にしても規制を逃れようとする側との「いたちごっこ」を完全に回避するのは難しく、その中では、全ての問題点を解決できないとしても、順次、より合理的な規制に柔軟に変化させていくことには意味があると思います。この意味で、今回の提言の方向性については評価ができるとといえるでしょう。
また、クラブ側の反論については、現在のクラブの実態のままで深夜営業を許すべきかという問題があります。社会としてこれを許容する風潮があるのだとすれば検討しなければならないでしょう。
(永野 海/弁護士)