注射ではなく鼻にスプレーするタイプの「ミストワクチン」が登場
感染者が18都道府県、計153人にまで広がったデング熱。今まで有効なワクチンは存在していませんでしたが、9月にフランスの大手製薬会社が、デング熱を予防する世界初のワクチンについて、臨床試験で効果が確認されたと発表しました。効果的なワクチンが存在しない現状、媒介する蚊への対策として虫除けスプレーや殺虫剤の売れ行きが好調で、従来にはなかった「ミストタイプ」の商品も出てきています。
実はワクチンにおいても、注射ではなく鼻にスプレーするタイプの「ミストワクチン」が登場して注目を集めています。インフルエンザ予防のワクチンで注射とは異なり、接種時の痛みがないのが最大の特徴ですが、いくつか注意しなければならない点もあります。
基本的に、インフルエンザはウイルスが鼻の粘膜に付着することで感染します。そこで、このミストワクチンはインフルエンザの生ワクチンを直接鼻にスプレーすることで、通常の不活化ワクチンと比べてより高い予防効果を得るために作られたものです。一般的な注射で接種する不活化ワクチンの効果は30~50%などと言われていますが、ミストワクチンの場合、2~7歳の子どもには80%以上の予防効果があるとも言われています。
日本では認可されず、国の補償対象にならない
このように、通常の注射タイプの不活化ワクチンより圧倒的に効果が高いと考えられるミストワクチンですが、残念ながら日本において承認されていません。では、日本で承認されていないワクチンがなぜ、最近取り沙汰されるのでしょうか。
このミストワクチンはアメリカでは10年前から、欧州でも2年前から承認されています。日本ではこれを独自に輸入した医療機関でのみ受けることができますが、非常に限られた施設のみです。しかも、日本では認可されていないということで、このミストワクチンで重篤な副作用が起きても、国の補償対象にはなりません。それでは、このミストワクチンに副作用はあるのでしょうか。
主な副作用としては、接種後3~7日間は40%程度が鼻炎になると言われており、通常のワクチンと同様に風邪症状に似た副作用もあります。また、接種年齢も2~49歳と限られ、妊婦や喘息・糖尿病・心肺疾患などの通常なら積極的にワクチン接種が勧められる人が接種できないなどの問題点もあります。
インフルエンザには手洗い・うがい、ビタミン摂取など、食事への配慮で生活面での対策も可能ですが、このようなミストワクチンでより高い効果が得られるのなら、未承認でも接種してみたいと考える人がいるかもしれません。しかし、ミストワクチンを希望する場合、上記のような点を十分に考慮して接種を検討することをお勧めします。
(佐藤 浩明/消化器内科専門医)