ローソンが高級スーパー成城石井の買収を発表
9月30日、コンビニ大手のローソンが高級スーパー成城石井(横浜市、年商544億円、120店舗)の買収を発表しました。買収額は、株式取得364億円に負債200億円等を加えた550億円。
成城石井は2004年、創業家から現・レインズインターナショナルが買収し、その後、2011年、三菱商事が5割出資する投資ファンド・丸の内キャピタルが、およそ420億円で傘下に収めたとされます。成城石井は独自に開発した総菜や輸入食料品が豊富な高級スーパー。ファンドのEXITとして、1度目の入札は不調だった成城石井を、同じ三菱商事系のローソンが手中に収めました。
強さ際立つセブンイレブンを、コンビニ2位のローソンが追撃
2013年のコンビニ業界の売上高は9兆8,724億円(前年比4.2%増)、店舗数は50,234店(同5.0%増)でした。2014年2月期の大手コンビニ3社の営業利益は、セブンイレブン・ジャパンが2127億円(前年同期比13.9%増)、ローソン681億円(2.9%増)、ファミリーマート433億円(0.5%増)と、セブンイレブンの強さが際立っています。
1974年、国内のコンビニ1号店としてセブンイレブン豊洲店(東京都江東区)オープンから40年。セブンイレブンはドミナント(エリア集中)出店を加速し、前期、過去最大の年間1579店を出店し国内店舗は16,319店に達しています。年間3000万食超えのヒット商品「金の食パン」等のプライベートブランド「セブンプレミアム」、高級ブランド「セブンゴールド」、ついで買いを誘発する「セブンカフェ」が営業利益を押し上げました。
コンビニ2位のローソンは1975年、ダイエーによる大阪府豊中市1号店を皮切りに関西中心に店舗拡大。2001年、ダイエーの経営不振から三菱商事が筆頭株主に。2002年、その三菱商事の新浪剛史氏が社長に就任しました。12年間、社長として健康志向の「ナチュラルローソン 」、生鮮コンビニ「ローソンストア100」、ミニスーパー「ローソンマート」等のイノベーションを起こし、11年連続増益を果たした中興の祖は、今月から、サントリーホールディングスの社長に就任します。後任の玉塚元一社長(元ファーストリテイリング社長)も成城石井を買収し、10月、広島地盤のポプラ(654店舗)との資本提携をまとめました。
飽和状態の中、フランチャイズ店の鞍替えが活発化
少子高齢化が進み、コンビニ5万店・業界売上10兆円という飽和状態の中、競合他社のエリアフランチャイズ店の鞍替えが活発化しています。この7月、全国紙が売却説を報じた東海地区地盤のサークルKサンクス(愛知県稲沢市、6359店、業界4位、チェーン全店売上高1兆188億円)。親会社のユニーグループ・ホールディングスは否定しましたが、同社は伊藤忠商事が3%出資する第4位株主。今後、ファミリーマートとの合従連衡の可能性も否定できないでしょう。背景には昨年、サークルKサンクスの四国のエリアフランチャイズ店舗の一部がセブンイレブンに、また、ローソンも昨年、鹿児島・熊本県のサンクス110店舗の鞍替えを行いました。
さらにセブンイレブンは、四国キヨスク、JR西日本と提携し、キヨスクをセブンイレブンブランドへの切替えを強化しています。
シェア拡大の覇権争いが激化する中、ローソンが生き残る道は?
関西発祥のローソンは、首都圏3400店舗とセブンイレブンに2000店以上の開きがあり、今回の成城石井買収は首都圏および富裕層を取り込むほか、コンビニの利便性とスーパーの品揃えを備えたローソンマート(60〜70坪)の新規出店(2016年度末までに500店)を後押しすることになるでしょう。
来年10月の消費税率アップを見越し、業界再編が加速します。外食チェーンの最大のライバルは内・中食に強いコンビニといわれて久しいところです。ローソンは手薄な出店地区を強化し、ネットとリアル店舗を融合するオムニチャネル戦略、ポンタなどの会員カードを切口としたビックデータ活用、ユナイテッドシネマなどの買収による関連事業の拡大、ミニスーパーにみる小商圏型製造小売業の実現に活路を開けるかどうか。「マチの健康ステーション・他コンビニと同質化しないネイバーフッドストア」としてROE20%、連結営業利益1000億円を目指し、セブンアイホールディングスとは異なるコングロマリットを構築できるかが注目されます。
(村上 義文/認定事業再生士)