京都府宮津市の土地の無償譲渡に総務省より「待った」
ふるさと納税制度が、注目されています。2,000円を負担するだけで、牛肉や果実などの地元特産品が貰えるとなれば、人気が出るのも当然でしょう。地方創生を標榜する安倍内閣としても、さらに利用に拍車を掛け地方活性化につなげるべく、寄付金控除限度額引上げや申告手続き簡素化を検討している模様です。
ところが少し前に、こうした流れに水をさすようなちょっとした事件が起こりました。天橋立で有名な京都府宮津市が、制度を利用し1,000万円以上を寄付した人には、景観を望む200平方メートル程の分譲地(時価750万円相当)を、無償で譲渡するとの特典を打ち出したところ、総務省より「待った」が掛かったのです。
各自治体が、税収増と地場産業への波及効果を狙って、ふるさと納税の「お得度競争」に知恵を絞る中で、宮津市は、売れ残りの分譲地を処分し、かつ、定住促進と寄付増額につなげたいとの思惑で、ある意味、突飛な制度を思いついた様です。
所得税法によると、宮津市のケースでは寄付金控除が適用されない
総務省が、制度の主旨を逸脱し、社会通念上の配慮に欠けると判断したのも当然でしょう。ただし、主務官庁といえども、自治体が地方税法の特例を遵守した独自の制度を作る限り、理由なく、これを中止させることはできません。
そこで総務省が持ち出したのが税法の規定です。所得税法第78条と地方税法第314条の7には、「寄付をした者が、その寄付をしたことで特別の利益が得られると認められる場合には、寄付金控除が適用されない」と明記されています。そうすると、宮津市のケースでは、単に750万円の土地を1,000万円で買うことになるため、制度を利用する人は誰もいなくなるでしょう。
総務省の指摘に従えば、ふるさと納税そのものが崩壊することに
総務省調査によれば、市区町村の大凡半分が、ふるさと納税への返礼を行っています。土地が肉や果実になったとしても、寄付金に対して「特別の利益が得られる」との本質は何ら変わるものではありません。総務省の指摘に従えば、答礼が有るものは全て寄付金控除の対象から外さざるを得ませんが、そうなると、ふるさと納税の仕組みそのものが崩壊することになります。
宮津市ほどではないにせよ、他にも高額の答礼品を謳った自治体があります。どこまでが良くて、どこまでが悪いか。税法規定を持ち出してまでストップをかけた以上、公平公正な運用のメルクマールを示す必要がありそうです。
(松浦 章彦/税理士)