実質2,000円で5,000円相当の高額特産品をゲットできる
平成20年から始まった「ふるさと納税制度」。初年度33,149名、72億5995万円だった寄付も、昨年度は、106,446名、130億1127万円となりました。人数で3.2倍、金額で1.79倍という普及ぶりです。ふるさと納税という言葉から「税金」だと勘違いされる向きもありますが、この制度はあくまでも「都道府県・市町村への寄付金」なので、国民の義務である納税ではなく、個人の「ふるさとを応援したい」という善意なのです。
ふるさと納税制度でいう「ふるさと」とは、応援(寄付)したい都道府県・市町村を指します。一般的に認識している自分の出生地ではありません。日本中、どこの都道府県市町村に対して寄付したとしても、寄付した先がすべて「ふるさと」ということになるのです。また、ふるさと納税は寄付者が自身で使い道を指定することができることから、その寄付目的は、1位が子ども・子育て、2位が災害支援・復興、3位が地域・産業振興になっています。寄付者の思いが使い道に直結しているということで、何に使われているか実感しにくい税金の納付よりも納得感が強い制度といえるでしょう。
ふるさと納税制度では、一定の上限はあるものの、実質2,000円負担で自分が応援したい自治体に寄付することができますが、応援される側の自治体は、1人でも多く、1円でも多くの寄付金を受けるために、その地方の特産品をお礼の品として用意しており、人気の特産品は、お肉、くだもの、お米、おさかな、宿泊券などです。最近では、10,000円を寄付し、実質2,000円で5,000円相当の高額特産品をゲットできるなどとしてテレビ番組で特集を組まれたりしていることから、ますます、ふるさと納税制度が浸透しそうな勢いです。
ふるさと納税は、自治体にとって何重もの恩恵がある制度
盛り上がるふるさと納税制度ですが、「実質2,000円で高額特産品の受領は趣旨逸脱ではないか」との疑問の声が上がっています。確かに、2,000円で5,000円の特産品ゲットという部分だけを見れば「応援ではなく自治体を苦しませている」風に見えるかもしれません。しかし、あくまでも自治体にとっては、1万円の寄付を受け5,000円の特産品を送るわけですから損はしていません。それどころか、特産品を提供(出荷)する地元業者の産業振興にもつながり、さらには自治体のパンフレットや定期発送物などを送ることで、観光客として来てもらう、定住して貰うチャンスを得るといった何重もの恩恵がある制度なのです。
ふるさと創生や地産地消、地方の時代といったキーワードが並び、地方に着目した政策が採られる昨今、ふるさと納税制度は、そのすべてを満たす制度だと考えます。高額特産品をゲットすることがその地方を応援することなのだと理解し、多くの人に「ふるさと」を応援してもらいたいものです。
(山根 敏秀/税理士)