ユニクロ、客単価が過去最高の伸びを記録
ファーストリテイリングは、9月の国内ユニクロ既存店売上高が前年比19.7%増加、客数が同1.9%増加、客単価は同17.4%増加したと発表しました。客数については、8か月ぶりの増加で、客単価においては過去最高の伸びを記録したとのことです。
ユニクロは秋冬向けの新作商品を5%程度値上げしているにも関わらず、なぜ、顧客から選ばれているのでしょうか?その考えられる要因は、大きく3つあると考えます。
気温に対応した商品販売をすることで顧客ニーズを逃さなかった
1つ目は、顧客ニーズに沿った商品展開をしていることです。「ユニクロといえばフリース」というイメージを持つ人は多いでしょう。これは、好みに合わせて選べる種類と豊富なカラー(柄)が揃っているため、「ユニクロに行けば、きっと欲しいものが見つかる」というように、ユニクロは顧客ニーズに沿った商品展開をすることが得意です。
今年は冷夏になるという予測が出ていたので、おそらく早めに秋物商品を投入する準備をしていたと思います。「9月は上旬から気温が低く推移したことから、秋物商品の販売が好調だった」と発表しているように、気温に対応した商品販売をすることで、顧客ニーズを逃さなかったことが、功を奏したと考えられます。
錦織圭選手の大活躍でスポンサー活動が効力を発揮
2つ目は、スポンサー活動が効力を発揮したことです。ユニクロは、テニスプレイヤーの錦織圭選手のスポンサーになっており、選手が活躍すれば、それだけで宣伝効果が得られます。
9月は、錦織選手が全米オープンの男子シングルスで日本人として96年ぶりの準決勝進出、日本人初の決勝に進出という大活躍をしたことで、そのスポンサーであるユニクロにも注目が集まり、宣伝効果が絶大だったと考えられます。
錦織選手の活躍が報道されてから、店舗で販売しているテニスウェアが売切れ状態になるなど、スポンサー活動が、売上に影響を与えていることがわかります。
「我慢しなくても、オシャレ」という訴求点が受け入れられている
3つ目は、独自の訴求点で商品展開をしていることです。ユニクロの商品の特徴は、機能性が高いことです。「夏は涼しく、冬は暖かい」というように、機能にこだわった商品を販売しており、それが魅力的に感じるCM等も流しています。「ジーンズなのに、動きやすい」「驚くほど軽くて温かい、全く新しいダウンウェア」というような、機能性や着心地を訴求点にすることで、消費者の興味を上手に惹きつけています。
「オシャレは、我慢」というイメージを持っていた人もいるかもしれませんが、それとは正反対の「我慢しなくても、オシャレ」という訴求点が、広く受け入れられているとも考えられます。
ユニクロは今年に入ってからも好調を維持しており、国内既存店前年比の客数は2月以降、下回っていましたが、売上高、客単価はともに、ほぼすべての月で前年を上回っています。そう考えると、9月の客数がぐっと増えたのは、やはり、錦織選手の活躍の影響が一番大きかったのではないかと思います。
あらゆる分野のリテール(小売)ビジネスにおいて、過去1年間で世界的に最も顕著な成果を残したと評される企業に与えられる賞、2014年度「Retailer of the Year(リテーラー・オブ・ザ・イヤー)」を受賞するなど、ユニクロは世界からも認められている企業なので、その取り組みなど今後の動向にも注目です。
(伊藤 伸朗/集客・顧客情報活用コンサルタント)