住宅ローン金利、市場の需要の影響を受けて低落傾向に
大手銀行が住宅ローンの金利を10月適用分から引き上げています。三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行が、主力の10年固定型の最優遇金利を0.10%引き上げて1.3%としました。他行も0.05%程度の金利の引き上げを実施しています。一方、前月の9月は、金利の引き下げが相次ぎました。理由は、住宅ローン金利の指標となる長期金利が約1年4か月ぶりの低水準で推移していたため。この長期金利が9月に上昇したために、大手銀行は10月から住宅ローン金利を引き上げたのです。
しかし、長期金利を指標として推移してきたはずの住宅ローンですが、近年、その傾向が変わりつつあります。大手銀行での現在の住宅ローン金利は過去最低水準。背景に、消費税増税後の住宅市場の低迷による、銀行間の貸し出し競争があります。住宅ローンの需要は前年同時期と比べると2~3割程度、減少しているとみられるため、需要の低下と、ネット銀行の住宅ローンへの参加により、住宅ローン業界は金利引き下げ競争の様相を呈しています。この様に、長期金利を指標として上下動を繰り返してきた住宅ローン金利が、市場の需要の影響を受けて低落傾向になっているのです。
今後、一層の引き下げに動く銀行が出てくる可能性は十分にある
それでは、住宅ローンの金利の指標となっている長期金利は、今後どのように推移するのでしょうか。長期金利の指標は、新発10年物国債の利回りです。額面0.8%の新発10年物国債の利回りは、この1年間では、最高で0.74%、最低で0.5%を割り込むぐらいで推移しています。前月少し上がったかと思うと、今月少し下がるようなジグザグの動きを繰り返しています。
そこで、住宅ローンの金利は、0.2%~0.3%程度の幅の中で上下動している長期金利と、金融会社の住宅ローンの取り合いのための金利引き下げ競争の両方の影響を受けて推移していくことになるでしょう。特に、ネット銀行は低金利を売りに打ち出しており、その影響で大手銀行の住宅ローンの金利は、過去最低を更新している状況です。
以上を踏まえると、今後の住宅ローンの金利は、多少の微増減を繰り返しながら、競争で下がっていく傾向にあると思われます。現在の金利水準は金融機関の採算として下限との見方もあるが、消費税増税や景気の動きによる貸し出し動向次第では、今後、一層の引き下げに動く銀行が出てくる可能性は十分にあるでしょう。
(福間 直樹/不動産コンサルタント)