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女性SNEPの温床「介護離職」を防ぐ在宅勤務制度の在り方

JIJICO 2014年10月16日 15時0分

新たな社会問題。介護離職をきっかけにSNEPに陥る女性たち

超高齢社会を迎えた日本において、今、企業は「介護離職」という問題に直面しています。40~50代の管理職をはじめとした企業の中核を担う人材が、親など家族の介護と仕事の両立が困難なために離職を選択するに至っており、深刻な経営リスクとして捉えられるようになりました。

また、昨今、社会問題化しつつある「SNEP(スネップ)」という言葉をご存知でしょうか。「孤立無業者」とも言われており、20~59歳の在学中を除く無職の未婚者で、家族以外の人と交流を持たない人々を指しています。近年急増しており、特に女性においては介護離職をきっかけとしてSNEPに陥る例が多く見受けられます。

この介護離職を防ぐために、仕事と介護を両立できる職場環境の整備が企業には求められています。その方策の一つとして挙げられるのは、在宅勤務制度による仕事と介護の両立支援です。それでは、企業が在宅勤務を導入・運用する際に何がポイントとなるのでしょうか。

制度導入の目的を明確にし、企業全体の共通理解を培うことが必要

家族を介護する必要に迫られた時、「このまま仕事を続けることは困難」と判断し、会社に相談することなく離職を選択する社員が少なくありません。これは、そもそも社員が「仕事と介護の両立」という発想を持つことができなかったり、「可能であれば両立したい」と思っていても、職場が相談しづらい雰囲気や環境であることが原因と思われます。

企業として、このような状況を回避するためには、まず、在宅勤務の導入目的を明確にし、その目的について企業全体の共通理解を培うことが必要です。在宅勤務を導入することにより「会社として仕事と介護の両立を支援する」という方針を周知し、「離職ではなく仕事を続ける選択肢がある」という認識を社員の間に醸成することが重要となります。

また、一緒に働く同僚に気を使ってしまい、在宅勤務の制度利用を躊躇するような状況も考えられます。家族の介護の問題、そして在宅勤務という働き方を選択する場面は誰にでも起こり得ることを社員一人ひとりに理解してもらい、制度を利用しやすい職場環境を整えることもポイントとなるでしょう。

労働時間の管理には「事業場外みなし労働時間制」という選択肢も

家族の介護をしながらの在宅勤務に関しては、食事・排泄などの世話や訪問ヘルパーへの対応など、業務が中断されることが想定されます。社内での勤務の場合と同じように、通常の労働時間制を適用する際は、業務の中断が長時間であれば、その時間を把握し、労働時間と区別することも必要となります。最近では、中断時間も含めて管理可能な時間管理のITシステムなどもあり、在宅勤務の導入に資するIT環境が整いつつあります。

また、在宅勤務時の労働時間の算定が困難な場合として、「事業場外みなし労働時間制」を採用することも考えられます。ただし、厚生労働省が示している在宅勤務時に「事業場外みなし労働時間制」が適用される以下の要件については、留意が必要です。

(1)業務が起居寝食等、私生活を営む自宅で行われている
(2)業務で使用する情報通信機器が、管理者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていない
(3)業務が随時管理者の具体的な指示に基づいて行われていない

これらの要件を満たさない場合は、「事業場外みなし労働時間制」は適用できません。企業それぞれの在宅勤務の実態により判断する必要があるでしょう。

介護というのは、「いつ終わるのかわからない」ものです。冒頭で触れたSNEPの問題から見えるのは、介護離職により精神的・経済的に追い込まれ、社会から孤立していく人々の姿です。仕事と介護を両立させる一つの方策として、在宅勤務が有効に活用されることが期待されます。

(佐々木 淳行/社会保険労務士)

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