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新発明誕生を後押しする企業の在り方

JIJICO 2014年10月19日 10時0分

発明に伴う権利は誰のものか、争い絶えない職務発明問題

職務発明における企業・発明者の関係については、どこが望ましい着地点なのかは難しい問題です。職務発明についての権利を、そもそも誰に原始的に帰属させるか、つまり、発明が生まれた瞬間、その発明に伴う権利は誰のものか(発明者のものか、企業のものか)さえ、争いがあるのが現状です。

いくらかの金銭を発明者に払うべきだという点はあまり異論がないようです。しかし、具体的にいくらかを決めるのは困難でしょう。「発明一件あたりいくら」と一律の報奨金を与えれば良いのであれば、話は簡単です。しかし、科学研究の分野では「ロトカの法則」と呼ばれるものがあります。これは、発明に当てはめて、ざっくり言えば「有用な多くの発明をする者は一握りでしかない」という法則です。一律の報奨金によって発明の形式的な件数を増やしても、それでは革新的な発明を促進する結果にならないのです。

単なる金銭の問題ではない。ノーベル賞受賞者のコメントが物語る

また、製品化後の売り上げに基づく実績報酬であれば、売れる発明を作ろうというインセンティブにはなるかもしれません。しかし、現実の製品は様々な技術の集積であり、売り上げには営業の要素もあるわけで、個々の発明がどれだけの寄与をしたかを算定するのは困難です。さらに、直接の製品化以前の発明であっても、原理的にブレイクスルーになっている基礎研究の金銭的評価は、一層難しい問題です。

そして、おそらく、職務発明の問題は、金銭的インセンティブだけでは解決しないでしょう。今回のノーベル賞受賞者のうち、赤崎教授は「好きなことをやらせてもらえた」と言い、中村教授は「怒りが原動力だ」と言いました。二人のコメントは対照的ですが、ある意味、盾の両面と言えそうです。つまり、技術開発や発明は、単なる金銭の問題ではないのです。

発明者を大切にする企業、社会が、新発明誕生を後押しする

結局のところ、金銭的インセンティブの多い少ないではなく、発明者を大切にする企業、社会が、新発明誕生を後押しするということになるのではないでしょうか。具体的に革新的発明を促進するためには、研究者の社内での立場や研究の自由度、研究環境、発明が人事考課にもたらす影響、研究者ひとりひとりの個性・研究に対する動機等も考慮すべきです。

また、国や地方公共団体としては、企業におけるそうした社内施策をバックアップし、さらには個人事業や零細・小企業に対しても、研究成果への助成だけでなく、発明が生み出されやすい環境づくりを後押しする施策を進めるべきかと思います。

(小澤 信彦/弁理士)

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