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「イクメン」増加の鍵を握る「イクボス」の利点

JIJICO 2014年10月19日 12時0分

「イクボス」は、会社の業務効率化にも役立つ

“積極的に育児をするメンズ”という意味の「イクメン」という言葉を聞くことが珍しくなくなってきました。では、「イクボス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。先日、経済誌にて「イクボス」という言葉が取り上げられましたが、男性の従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司のことを意味するそうです。子育てに積極的に関わる男性をイクメンと呼ぶのに倣い、そのイクメンを職場で支援するため、部下の育児休業取得を促すなど、仕事と育児を両立しやすい環境の整備に努めるリーダーのことを指します。

今までの日本社会では、部下が「妻が来週出産します」と報告すると、上司が「子どものためにも、今まで以上に働けよ」というのが聞き慣れた例と言えます。これがイクボスの場合、「これからはだらだらと仕事せず、短時間で成果を出す働き方をしなきゃな。ワークライフバランスだ。早く帰って家族を大事にしろ」となります。

それでは、企業にとってイクボスとは、どのような意味を持つのでしょうか。臨床心理士・社会保険労務士として多くの企業へアドバイスしてきた筆者としては、これまでの時間に対しての考え方を変える必要があると考えます。「イクボス」の推奨とは、育児をさせることだけが目的ではなく、仕事をできるだけ効率化する、あるいは急な不在にも対応できるよう仕事の標準化、共有化を進めるという業務改革に他なりません。「イクボス」は、会社の業務効率化にも役に立つのです。

単体での導入ではなく、会社の制度全体として導入することが大切

同じように最近流行している言葉として、前述の「ワークライフバランス」という言葉もあります。仕事と私生活の両立と訳されますが、この言葉も時間当たりの効率を高め、仕事以外の時間を豊かにしようというのが本当の意味です。

イクボスにせよワークライフバランスにせよ、言葉の裏にある本当の意味を忘れ、あべこべな運用になっているケースを散見します。イクボスの場合、本来の仕事は軽視し、育児さえすれば良いという風潮になってしまうのです。また、ワークライフバランスでは、仕事をないがしろにして、個人の生活だけを主張しているという職場もあります。

このような状態にならないためには、イクボスという制度を単体で導入するのではなく、会社の制度全体として導入することが大切です。例えば、「育児だけなく介護への配慮」「自己啓発のために社外で勉強できる制度」「時間外労働に頼らない効率的な勤務方法」などがあります。その中でも企業として大切なのは、どうしてその制度を導入するのかという理念です。

例えば「頑張る人がより頑張れる環境作り」という理念を打ち立て、そこから制度をブレイクダウンして設計していくと、あべこべな運用になりません。イクボスなど新しい制度導入の際には、理念から計画をブレイクダウンして立案していくことを実施してみてください。

(植田 健太/臨床心理士・社会保険労務士)

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