職を持たない労働世代にも忍び寄る老後破産
先日、放送されたNHKスペシャルで「老後破産」という番組が放送されました。記憶されている人も多いかもしれませんが、この老後破産という現実をあらためて再認識して衝撃を受けました。
私たちの住む日本には、現在、一人暮らしの高齢者が200万人もいると言われています。この老後破産が高齢者に忍び寄る背景には、核家族化、貧困など、さまざまな原因があります。私の経験では、貧困が原因で身内から遠ざかりはじめ、友人からも遠ざかってしまい、果てには孤立を余儀なくされている人々が多いというのが現状です。こうなると、地域からも孤立し、人との関わりを自分で絶ってしまうケースにまで発展しかねません。
こうした現象は高齢者だけでなく、職を持てずにいる労働世代の人全員にいえることではないかと感じています。例えば、持病が原因で生活保護を受けている働き盛りの世代にも、同様のことが起きています。生活保護を受けているという負い目を感じ、友人や親族、地域や社会と距離を置き、結果、全てに対して引け目を感じ、孤立感や孤独感に苛まれ、セルフネグレクトに陥ってしまう若い世代が増えています。
老後破産は家族や地域、社会との繋がりをも喪失してしまう
また、この老後破産は金銭面だけの破産にとどまらず、身内や知人との繋がり、地域との繋がりに関しても破産に追い込み、最後は社会との繋がりの破産という、人間が生きていく中で最も欠落してはいけない繋がりを喪失してしまいます。
一人暮らしの高齢者が200万人といわれる中、前述のような若い世代を含めるとその総数が何百万人になるのか想像もできません。今回のNHKスペシャルで放送された「老後破産」という番組には、高齢者だけでなく、全世代に向けた大きな課題が含まれていたのではないでしょうか。
今回、クローズアップされた高齢者全員が口をそろえて話していたのが「まさか、自分がこんな生活をすると思わなかった」「老後を真剣に考えもしてこなかった」という言葉で、非常に印象に残っています。高齢に近づきつつある人には老後の備えが万全かどうか、また、若い世代の人々には、老後について考える良いきっかけになるでしょう。金銭面だけでなく、人や地域、社会とのつながりを含め、今一度考えてみましょう。
(花輪 隆俊/遺品整理士)