老後資産形成の有効「確定拠出年金」
先日、日経新聞に「確定拠出年金 誰でも加入」の大きな文字が一面を飾りました。確定拠出年金とは、「節税」という恩恵を受けながら、「自分年金」作りができる国の制度です。特に大手企業では、福利厚生の一環としてこの制度が導入され、500万人もの会社員がすでに加入していると言われています。
公的年金だけでは十分な老後の収入が得られないとの認識が深まる中、掛金が全額所得控除になり、運用益も非課税。また、受取時も税金が優遇されるため、老後資産形成の有効な手段として注目されている仕組みです。
そして、自らの意思で任意加入ができる「個人型」という制度もあり、こちらは会社がこの制度を導入していない会社に勤務する人や自営業者などが利用しています。
確定拠出年金制度において「誰でも」は最も大きな課題
実は、確定拠出年金制度において「誰でも」という言葉は、これまで最も大きな課題とされていました。確定拠出年金は公的年金と異なり「自分年金」です。加入者は自身の口座を「持ち運び積立を継続する(ポータビリティ)」ことができます。例えば、大手企業に勤めていた人が、転職すると次の会社に自身の「確定拠出年金口座」を持ち込み、継続が可能なのです。
ところが、現行制度では、ポータビリティができないケースがありました。専業主婦(第三号被保険者)、公務員、確定拠出年金以外の企業年金がある会社に勤めるケースです。その場合、口座資産は原則60歳まで凍結されてしまうのです。
年金上乗せ制度がある人に、さらに税制優遇が必要なのか
専業主婦の場合は、国民年金の保険料が免除されていますし、夫の所得税の計算においても、配偶者控除などの優遇を受けているため、これまで確定拠出年金への加入が認められませんでした。
また、公務員の場合は、公的年金制度として会社員よりも手厚い「職域加算」という仕組みがあるため、確定拠出年金への加入が認められていませんでした。しかし2015年から公務員の年金制度「共済年金」は、会社員の年金制度「厚生年金」と一元化されます。そういう意味では、確定拠出年金加入も特に問題ないのかもしれません。しかしながら、一元化後も「年金払い退職給付制度」として、やはり公務員だけの上乗せ年金も創設されることになっています。これは確定拠出年金以外の企業年金がある会社の社員が、確定拠出年金の加入者になれないことと考え方は一緒です。
そもそも「恵まれた」年金上乗せ制度がある人に、さらに税制優遇が必要なのか、という議論があるのです。
根底にある問題点は、加入者の「資産形成」に関する教育不足
しかしながら確定拠出年金の根底にある問題点は、加入者の「資産形成」に関する教育不足です。確定拠出年金では加入者が金融商品を選び運用し、自身で資産を増やしていかなければならず、そのための学びの場が提供されなければなりません。
企業で確定拠出年金が導入されている場合は、「学びの場」が少なくとも一度は提供されるチャンスがありましたが、「誰でも」加入ができるようになると、その学びの場を誰がどのように提供するのかの議論も必要になってくるでしょう。
(山中 伸枝/ファイナンシャルプランナー)