新駅設置がもたらす3つの効果
東京メトロ日比谷線の新駅設置が、東京メトロ及びUR都市機構から今月正式に発表されました。新駅(以下、便宜上「虎ノ門新駅」という)は、今年5月竣工した超高層ビル「虎ノ門ヒルズ」に直結し、2020年の東京オリンピックまでに共用開始予定です。また、今年6月には、JR東日本が田町—品川駅間への新駅設置(同、「品川田町新駅」という)を正式発表しています。こちらも、東京オリンピックまでに暫定開業の予定です。今回は、新駅開業による不動産価値への影響について述べてみます。
まず、新駅設置の影響として、次のような効果が挙げられます。
1.交通利便性の向上
2.商業・居住ニーズ、ブランド力の顕在化・向上
3.近隣・周辺エリアの整備・開発による複合効果
新駅設置に加え広い範囲での開発が予定。成功すれば効果は絶大
品川田町新駅では、駅の西側(田町車両基地跡地)に13haの開発可能用地が創出されます。これ以外にも、周辺では「芝浦水再生センター地区街づくり」「運河ルネサンス構想」など多くの計画が目白押しです。芝浦地区がバブル時のように、また脚光を浴びるかもしれません。また、田町駅から約1.3km、品川駅から約0.9kmに所在するため、泉岳寺駅のみが最寄り駅であった付近の居住エリアの交通利便性はかなり高まるはずです。
虎ノ門新駅については、霞ヶ関—神谷町駅間の距離は約1.3kmと、田町—品川間ほど離れていませんので、交通利便性が高まるとはいえ、恩恵を受けるのはごく一部のオフィスビルに限られます。しかしながら、このエリアの目玉は、「新虎道路(環状2号線)」を、パリのシャンゼリゼ通りのようにする計画です。これが実現すれば、オフィスワーカーのみならず、ショッピングや飲食などで憩いを求める人々が集まるエリアにもなります。このエリアが、インターナショナルスクールや外国人向け医療施設等を備えた職住近接型の国際新都心に化けるかどうかは、森ビルの頑張りにかかっています。
どちらも、新駅設置に加え広い範囲での開発が予定されており、成功すればその効果は大きそうです。
新駅エリアにおける地価の修正上昇率は50%内外が見込める
次に、定量的に考えてみましょう。実は、最近の東京都心の事例で、新駅設置がらみの地価の動向を示す、ちょうどよいデータは見当たりません。そこで、新駅設置ではありませんが、2012年にスカイツリーが開業した墨田区の事例、2010年3月に横須賀線の駅が開業した川崎市武蔵小杉の事例、2013年にグランフロント大阪が開業した大阪梅田の事例を取り上げます。開業前の2005年から今年までの9年間における近隣の地価公示や基準地の価格の上昇率を求めることで、それぞれのイベントの影響を測ります。但し、単純な上昇率には、一般的な不動産マーケットの好不調の影響が含まれてしまいますので、一定の手法でそうした影響を排除した上昇率(便宜上、修正上昇率という)を求めます。結果は次の通りです。
・スカイツリー:修正上昇率 約22%
・武蔵小杉:修正上昇率 約66%
・グランフロント大阪:修正上昇率 約43%
スカイツリーでは、周辺を巻き込んだ開発にまでは至りませんでしたが、武蔵小杉や梅田では、マンションや商業施設が次々と開発され複合効果が顕著となったことから、地価の修正上昇率がスカイツリーに大きく勝る結果となりました。
これらから、東京オリンピックまでの約6年間とその後3年間の9年程度の期間を見据えると、新駅エリアにおける地価の修正上昇率は50%内外が見込めそうです。新駅設置の効果は、単純な交通利便性で決まるのではなく、複合的な開発効果でブランド力や集客・居住力を高められるかにかかっているのです。その意味で、両新駅エリアは、今後、非常に期待が持てると言えましょう。
(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー)