中小企業において「社長不足」が蔓延し「廃業ラッシュ」が懸念
帝国データバンクによると、日本の社長の平均年齢は2013年で58.9歳で、1990年と比べて約5歳上昇しました。今後、中小企業において「社長不足」が蔓延することが予想され、「廃業ラッシュ」が懸念されています。
廃業を防ぐためには事業承継をスムーズに成功させたいところですが、それには以下の3つの問題が立ちはだかります。
1、承継する事業が過去の成功モデルである
2、承継する資産が一人っ子を除いて兄弟姉妹で相続する財産である
3、承継者選択に適切性があるかどうか
ビジネスモデルの有効期間は20年程度。見直し修正の必要も
まず、「承継する事業が過去の成功モデルである」という点について。親が何年前に創業しているか、あるいは何年前に承継しているかによって若干異なりますが、仮に20年以上前だったとすれば、承継する事業は一つのピークを過ぎているかもしれません。それは、一つのビジネスモデルの有効期間は20年程度と考えられるからです。したがって、親の事業を単純に承継するのではなく、現在の経営環境に適応するよう見直し修正を行う必要があります。
見直し修正は組織形態、事業所立地、商品、設備の内容、販売方法、取引条件等、事業のあらゆる領域で求められます。当然、一定の資金が必要になってきますので、資金調達の可能性も承継時の課題の一つになります。
事業用資産は相続財産の一部。相続に関する争いを防ぐ備えを
次に、承継する事業用資産は相続財産の一部でもあります。相続について兄弟姉妹間で問題なく決めることができるのであれば良いのですが、しばしば確執が発生します。相続を円滑に進めるための決定権者は父親(時として母親)です。相続に関する争いを防ぐためには、親が存命中に相続について内容を明確にし、子どもたちへ伝えて親の意向を明示しておくことが必要です。
親としては承継する子どもに有利な相続をさせざるを得ない場合もありますが、そうであっても承継しない子どもの遺留分に留意し、生前贈与も活用して、無用な争いを起こさせないよう配慮するようにしなければなりません。もちろん相続の内容については遺言書に明記し、その書式にも注意して、無効な遺言書とならないように注意しましょう。
「長男」に固執せず、最適任者を選択するという考え方も必要
最後に、承継者の選択は、親が子を指名し、その指名を子が受諾して成立します。親の指名が家庭的に問題なく、子も自らの意思で受け入れている場合でも、親が「長男だから」との思いだけで指名し、子も「長男だから仕方ない」という思いで受諾しているとすれば、やや不安が残ります。
なぜなら承継すべき子の選択と子の意思が一致したとしても、その子が承継可能な子の中で最適任者であるのかどうかの別の問題があるからです。今後の経営環境は激変が予想されます。その厳しさを乗り越えるためには、承継者自身の意思との合致性だけでなく、経営に必要な力量も問われることになります。もし、複数の承継可能者があるのであれば、その中で最適任者を選択するという考え方も必要でしょう。
廃業しない、失敗しない事業承継のためには、時間的にも人間関係調整的にも十分な準備が大切なのです。
(加藤 博幸/経営コンサルタント・中小企業診断士)