武田薬品工業がミドリムシ含有の健康補助食品を通販限定で発売
製薬国内最大手、武田薬品工業とバイオベンチャー企業「ユーグレナ」は、豊富な栄養素を持つ藻の一種「ミドリムシ」を配合した製品の開発に関し包括提携を締結したと発表しました。武田薬品工業は、ミドリムシ含有の健康補助食品「緑の習慣」を通販限定で発売することに。「ミドリムシ」はどのような機能を持っているのでしょう?
誤解している人も多いかもしれませんが、ミドリムシ(ユーグレナ)は、「虫」ではありません。昆布やワカメと同じく藻の仲間です。もっとも大きな特徴は、変形しながら自力で移動もできる動物の側面も持つこと。つまり、動物と植物の両方の特徴を持つ、100分の1ミリメートルほどの微生物なのです。植物のように光合成を行い栄養素を作るだけではなく、動物のように移動するため、動物性の栄養素も有しています。
動脈硬化を抑える物質など、様々な栄養素を一度に摂取できる
現代人の健康寿命を低下させている大きな原因は、高血圧症、糖尿病、そして脂質異常症です。脂質異常症の中には、悪玉コレステロールが高い「高コレステロール血症」と、メタボリック症候群に関係する「高中性脂肪血症」があります。それらの蓄積により、動脈硬化が起こり、進行していきます。
では、動脈硬化とは何でしょうか?簡単にいえば、老化です。私たちの体のすべての細胞には、血管を通して酸素と栄養が送られています。その血管が詰まっていき、血液が流れにくくなっていくことを動脈硬化と言います。動脈硬化を抑える物質として青魚に含まれるDHAやEPAが注目されており、実際、脂質異常症の食事療法の際は必ず「青魚を摂りましょう」と医師や栄養士から説明を受けると思います。
青魚に含まれるサラサラ成分のDHA・EPAは、青魚自ら生合成できず、これらを含むミドリムシなどプランクトンを捕食し、蓄積すると言われています。ミドリムシには体の調子を整えるビタミンやミネラル、DHAやEPA、体の元になるアミノ酸などが多彩に含まれています。このように、様々な栄養素を一度に摂取できるというメリットがあります。さらに、ミドリムシは、植物のような固い細胞壁がないため消化吸収率も高いと言われています。DHAやEPAが有効に摂取できるのであれば、興味が湧く生き物です。
ただし、健康食品に過度の期待は禁物
ミドリムシを摂取することが、魚と同じような効率で有効なEPAやDHAをヒトの体に蓄積できるのかという懸念はあります。健康保険で認められている医薬品としてEPA製剤、あるいはDHA製剤が使用できますので、脂質異常症の人、特に心臓や脳の病気が心配な人は、医師と相談してください。
健康食品一般に言えることですが、長期にわたり摂取したときに本当に病気の発症を抑えられるかどうかはわかりません。健康食品は、「家計に響かない程度で、サプリメントを希望している人が使用するものである」という認識が必要です。健康食品にお金をかけ過ぎたために、病院にかかれず、コレステロールが高くなりすぎて心臓を栄養する血管が詰まった、なんてことにならないように、気をつけてください。また、薬を服用中の場合、必ず医師に相談してください。
(大西 勝也/内科医)