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子どもの「声」は「騒音」か 訴訟相次ぐ

JIJICO 2014年10月31日 12時0分

子どもによる騒音が許容される雰囲気は昔ほどない現実

先日、保育園児の遊ぶ声に腹を立て、手斧で園児の保護者を脅したとして、暴力行為等処罰法違反で逮捕されたというニュースがありました。

園児など子どもの遊び声を騒音と感じるかについては、人によってかなり受け止め方に違いがあります。子どもは大きな声を出したり、走り回ったりするのが仕事で、そうして成長していくものだという意見もあるでしょう。また、発生源が子どもであろうとなかろうと騒音は騒音という人、あるいは子どもの出す騒音は他の騒音以上に苦手、と感じる人もいると思います。

ただ、現代社会において、子どもによる騒音が許容される雰囲気は、少なくとも昔ほどはないのが現実のようです。少子化や核家族化の中で、子どもがいない世帯が増え「子どもの出す騒音はお互い様」と考えられる人が少なくなっていることも影響しているでしょう。また、マンション暮らし等の増加によって生活の中での騒音が減少し、子どもの声がことさら耳につく状況もあるのかもしれません。もしかしたら、ストレス社会の中で、一人一人の騒音に対するストレス許容度が小さくなっているのかもしれません。

保育園などが迷惑施設と考えられ、住宅地での保育園開設が難しくなったり、開設するにしても園児を外で遊ばせる時間が制限されたり、多額の費用を投じて防音壁設置工事が必要になったりすることも珍しくないようです。

子どもの遊ぶ声や音などを「騒音」として認める判決も

さて、「静かに暮らす権利」というものが憲法で明示的に規定されているわけではありません。しかし、憲法13条の幸福追求権や憲法第25条の生存権を根拠として、静穏な生活環境を享受する権利(静穏権)というものは、しばしば主張されます。公害問題などでクローズアップされるようになった環境権の一つに位置づけられます。権利の名称はともかく、受忍限度を超えるような、ひどい騒音に悩まされている場合に、騒音の差し止めや、損害賠償が認められる例は少なくありません。

ただし、子どもの遊ぶ声や音などが騒音として訴訟で争われ、一部にこれを騒音と認める判決が出るようになったのは比較的最近のことだと思います。マンションの上の階に住む子どもの騒音が下の階に住む住民の受忍限度を超えているとして慰謝料が認められた判決や、公園の噴水で遊ぶ子どもの声がうるさいとして差し止めを申し立てた事案について、公園の噴水使用を制限する決定をした裁判例などについて、記憶にある人もいるでしょう。

社会全体の子どもに対する寛容度が問われている

日本には、騒音の発生源が子どもだからといって、無条件にこれを許容すべきとする法律はありません。基本的には、他の騒音と同様に、各地域の条例などで定められた騒音基準を超えているかどうかなど、客観的な基準で判断されるのが原則です。よって、子どもの出す音であっても、これが受忍限度を超える騒音だとして損害賠償や差し止めが認められる可能性は常にあるわけです。

もっとも、これらの請求が認められるかどうかは、騒音の値だけでなく、騒音の態様や、騒音が発生している場所の地域環境、騒音の継続状況、採られている防止措置など様々な要素を勘案して判断されます。保育園での子どもらの遊び声などは、社会全体が子どもに対して寛容であれば、他の騒音よりも受忍すべき程度を大きく見るということは十分にあり得ることです。社会全体の子どもに対する寛容度が問われているといえるかもしれません。

(永野 海/弁護士)

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