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「婚前契約」をめぐる日本と欧米の反応の違い

JIJICO 2014年10月31日 10時0分

日本ではあまり聞かない婚前契約。海外では珍しい話ではない

「婚前契約」を知っていますか?最近では、俳優・金山一彦さんと弁護士・大渕愛子さんが婚前契約を交わしていたことを明かし、その内容をテレビ番組内公表して話題になりました。婚前契約とは、結婚の前に、結婚生活における夫婦の財産をどうするか、離婚の際の財産分与をどのようにするかを主として取り決める「契約」です。

日本ではあまり聞かない婚前契約ですが、海外では別に珍しい話ではありません。資産を多く持っている人だけでなく、普通に暮らす人々の間でも婚前契約を結ぶことがあります。

日本人は今の関係性を重視し、書面にすること自体を回避する

これは日本と欧米諸国の「契約」に関する考え方の違いが大きく反映されているように思います。例えば、日本の企業間の契約のチェックをしていると、主要な要素だけを取り決めて、「その他本契約に定めない事情については相互当事者で誠実に協議する」と書かれているものも少なくありません。つまり「細かいことを決めなくても、お互いの信頼関係で解決できる」という考え方が背景にあります。一方、海外の契約書のほとんどは、互いの信頼関係が壊れてしまう可能性を踏まえた上で、考えられる法的リスクについての取り決めをできるだけ網羅しようと作られています。

また、親族間のお金の貸し借りがトラブルに発展し、相談を受けることがありますが、大概は「身内で借用書なんて水くさい」と、契約書の類いを作成していないことがほとんどです。こういった場合も、信頼関係がベースにあり、書面という形にすること自体を回避する考え方に基づいているようです。

今後、日本でも「婚前契約」を締結する方向にシフト?

そういう考え方の違いが如実に表れているのが婚前契約なのでしょう。日本人の多くは「結婚しようという時に、どうして離婚後のことなんて考えるの?」と違和感を持つかもしれません。しかし、逆に言えば、仮に互いの関係が壊れてしまっても「泥沼にならないで済む」ということも言えるわけで、婚前契約を結ぶ=愛情が足りないという問題でもないでしょう。また、私個人としては、婚前契約はともかくとして、たとえ親族間のお金の貸し借りであってもきちんと契約書を作成することが、けじめのついた人間関係を継続するためにも必要と考えます。

昔に比べると、日本も「関係は壊れない」という契約に対する当事者の共通認識が希薄になっていますので、「悪いことは起きうる」と考えて事前に対処する方向にシフトしていくことになるのかもしれません。

(白木 麗弥/弁護士)

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