初のマイナス金利の背景に金融機関の思惑
財務省が10月23日に実施した償還期間3カ月の短期国債の入札で、平均落札利回りがマイナス0.0037%となりました。国債入札でマイナス金利が付くのは初めてのことです。この初のマイナス金利は、暮らしにどういった影響を与えるのでしょう。
短期国債は、大量に発行されている長期国債の償還(借金の返済)を行う際の資金不足を補うために1986年から行われてきました。償還期間は、3ヶ月物、6ヶ月物、1年物と短く設定されています。マイナス金利になると、国はお金を借りているのに利益が出ることになります。
この短期国債ですが、昨年4月以降の政府による金融緩和政策によって、日銀が大量に買い入れるようになりました。そのため、市場に出回る国債が少なくなることによって、さらに需要が高まりました。マイナス金利が付いたのは、入札に参加した金融機関が満期時より高い値段で短期国債を購入したためです。満期まで保有していれば損が出ますが、金融緩和政策による日銀の大量の国債の買い入れへの期待が増していて、買ったときより高く売れると考えられているのです。短期国債を所有できるのは金融機関などの法人に限られていますので、預貯金の貸出先に困っている金融機関は、短期国債の売り買いによって利益を上げようとしているのです。
日銀は短期国債の買い入れを減額し、長期国債を増額
日銀はこの短期国債のマイナス金利を危惧しているようです。理由は、金融機関が日銀に預けることを義務化されている「準備預金」の利回りが0.1%で、この準備預金を市場に戻す形で行われている短期国債の買い入れによる損失は、準備預金の金利より短期国債の金利が安ければ安いほど差額が大きな損失になるからです。
日銀は24日以降、短期国債の買い入れを減額し、残存1年超5年以下の長期国債買い入れを増額する措置を取りました。このため短期国債の需要が減って、短期国債の金利はプラスに戻るものと見られています。
長期国債の買い入れが増えることで、住宅ローン金利が下がる予想
日銀は、金融緩和のために、国債を損を承知で毎年60~70兆円程度買い入れする方針で、そのうち長期国債が50兆円、残りを短期国債で買い取っている状況です。24日以降短期国債の買い入れを減らすことにより、長期国債の買い入れが増えることになります。今後、長期国債への需要が増し、価格が上がることで、長期国債の金利がさらに下がることが予想されます。
長期国債は、長期金利と連動しています。長期国債の金利が下がることで、長期金利が下がり、連動して、預金金利や住宅ローン金利、さらには企業への貸出金利が下がることが予想されます。預貯金の利息は減りますが、住宅ローンが借りやすい状況がしばらく続くということです。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)