「英検」がイメージチェンジ。「世界のEIKEN」へ
中高生を中心に年間受検者数230万人を誇る、英語検定試験「英検」。1963年に「実用英語の普及・向上」を目的として始まった検定試験ですが、従来の「国内向け」からイメージチェンジを図ろうとしています。その内容は、高校生の留学に必要な英語力基準として豪州政府と協定を結んだり、英語力の国際規格に合わせたスコア表示を試験的に始めたりするなど、「世界のEIKEN」を打ち出す方向性となっています。
現在、留学に必要な英語力の指標としてはTOEFLが一般的ですが、需要拡大を狙う英検と、「英検人気」に着目し留学生を呼び込みたい豪州政府の狙いが一致した点が今回のポイントでしょう。今後、「世界のEIKEN」が、日本人留学生とグローバル教育にどのように貢献するのかが注目されます。
豪州政府と協定によって交換留学を検討する学校の増加に期待
日本から海外への留学生数は2004年をピーク(約8万人)に、ここ数年は実に約30%の落ち込みです。「学生の内向き志向」「少子化の影響」「日本国内の大学が増えた」「国内の大学が外国人授業で国際化した」「留学先の多様化」「ネット活用者が増えた」「家計に余裕がなくなった」などが主な理由と考えられます。
「百聞は一見に如かず」という言葉は、実は教育分野にこそ、強く当てはまります。英語圏で実際に英語を学ぶことは、国際的な視野を育むこと、海外から見た日本を考える絶好の機会となります。
今回、豪州政府と協定によって、日本の中高生が英検合格から「留学」へ学習目標の視野を広げる機会となれば、交換留学を検討する学校が増えてくるかもしれません。そして、国内でも英検ニーズがさらに高まり、英検を中心に指導強化がなされ、結果的に国内の教育業界を刺激すると同時に、地域の国際化意識を高めることが期待されます。
留学を実現する経済面を援助するため官民が連携することも重要
ただ、やはり課題もあります。まずは経済面でしょう。家計への影響度がどの程度になるのかが現実的には問題になってきます。そこで、英検の成績上位合格者には留学を優遇できる措置や、教育支援金などが申請できる制度など、日本の中高生の個性や強みを活かし、特色ある国際化の成長を図るためには、官民が連携することも重要になってくると考えられます。
また、従来の英検合格のための学習方法にも課題がありました。ペーパー教材ではできなかったリスニング等は、パソコンやeラーニング教材を使えば、高能率に繰り返し学習することが容易になっています。これからは、さまざまなネット教材(eラーニング教材)を活用し、学年や年齢に制限されず、早期からの学習も期待されることでしょう。
「英検」「留学」「教育支援」「eラーニング」。国際化へ向けた人材育成のキーワードが具体的になってきたのではないでしょうか。
(田中 正徳/次世代教育プランナー)