米FRBが「量的緩和」の終了を決定
米連邦準備制度理事会(FRB)は10月29日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、米国債などの資産を買って市場にお金を流す「量的緩和」の終了を決めました。この決定は、日本の暮らしにどのような影響を与えるのでしょう。
リーマンショック後の金融危機を受けて、米FRBは2008年11月以降、合計3回の量的緩和を行ってきました。第1弾は08年11月~10年3月に実施。1.7兆ドル(約185兆円)の住宅ローン担保証券や米国債などを購入しました。その後、景気回復が鈍ったために、10年11月~11年6月に第2弾を実施。6000億ドルの米国債を追加購入しました。そして12年9月に第3弾を開始し、一時は毎月850億ドル(約9.3超円)の米国債などを買い入れました。
今回、失業率の改善等を受けて、量的緩和を終了することに。11月から債権の購入額はゼロになります。
金利引き上げへの観測が高まることによりドルの価格が上昇
米国の景気は、この3度の量的緩和を受けて、6年ぶりの回復を見せています。この間、国債等の債権の利回りが低かったため、資金は株式に流れて株価が値上がりしました。株式を保有する高額所得者らの消費が増えて内需に火がつき、企業業績や雇用情勢も改善。失業率は、ここ6年の最低レベルである5.9%であり、就労者も850万人以上増加したといいます。米国債などを買い続けたため、FRBの資産は米国の経済規模の4分の1に相当する4.5兆ドル(約490兆円)にまで増えました。この市中に出回った巨額の資金を徐々に回収していくために、量的緩和を終了したのです。
量的緩和の終了は金融引き締めを意味するため、米国内では株が値下がりしました。国債の大量購入がなくなったことで国債の価格が下がり、10年国債利回りは、一時3週間ぶりの水準に上昇しました。そして、金利引き上げへの観測が高まることによりドルの価格が上がりました。
今後、日本株は上がっていく予想だが、円安による物価上昇に懸念
量的緩和終了を受けてドル買いが進み、為替相場は円安ドル高となりました。これ自体は、日本の輸出企業の収益が改善されるため、日本株は今後上がっていくものと予想されています。さらに、輸入物価の上昇が進むため、物価上昇率が政府の目標の年2%に近づいていくことになります。
一方、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は物価の上昇により14ヶ月連続で低下しています。円安は、さらなる物価の上昇=実質賃金の低下を招く恐れが高いため、今後、政府は内需拡大のための実質賃金をあげていくための施策が求められていきます。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)