コクヨが中国の人材育成に「スラムダンク」を活用
文房具のコクヨが、中国現地法人である国誉商業の各事務所に「スラムダンク図書館」を設置し、人材育成に活用しています。「スラムダンク」は約20年前に連載されていたバスケットボールを題材にしたマンガで、アニメにもなり爆発的な人気を博しました。このマンガが連載されていた当時、高校生の私も熱中して読んだ記憶があります。
「バスケットボール初心者の主人公と個性豊かなチームメイトが、チーム内の衝突を乗り越えて強豪校に挑んでいく」というストーリーですが、ただ単に面白いだけの作品ではありません。チームの在り方や仲間との心の絆などについての示唆にも富みますので、コクヨは中国現地法人の社員たちに「チームワーク」を教育する教材として、スラムダンクを選んだのでしょう。また、現地法人社員のスラムダンクに対する知名度は100%だったことも、スラムダンクを選んだ理由の一因だと考えられます。
感情移入しやすく、研修内容に強い関心を持って参加してもらえる
チームワークの大切さについて説いた書籍などはたくさんありますが、マンガやアニメを教材にすることのメリットとは何でしょうか。
一つには、「感情移入のしやすさ」があります。スラムダンクに限らず、優れたマンガやアニメには惹き込まれる様なストーリーがあります。スラムダンクでいえば、最初はバスケ初心者だった主人公が努力の末に活躍していく姿や、衝突や揉め事が絶えなかったチームが勝利という目的を達成するために協力するようになり、そして最後には強い絆で結ばれていく様子は、心を打つものがあります。しかも、マンガやアニメは画を伴いますので、活字だけでは感じられない臨場感を味わうことができます。これらの要素が総合的に働くマンガやアニメは登場人物に感情移入しやすく、研修の教材に採用することで、研修内容に強い関心を持って参加してもらえるというメリットがあります。
世界共通の教材として日本のマンガやアニメが採用されるかも?
また、クオリティの高い日本のマンガやアニメは、海外でも人気があることもメリットとして挙げられます。今回の国誉商業の社員全員が、スラムダンクを知っていたということがその証拠です。また、私の友人の経営者の妹夫婦がオーストラリアに住んでいるのですが、その子どもはyoutubeで日本のアニメを見て日本語を勉強していて、オーストラリアに住んでいながら日本語がペラペラだそうです。「画」は言葉の壁を乗り越えて世界共通ですから、外国人従業員の教育でも効果が高いと考えられます。
これからグローバル化の進展に伴い、世界共通の教材としてマンガやアニメが採用されることが増えてくるかもしれません。
(福留 幸輔/組織・人事コンサルタント)