日銀のサプライズ緩和で株式市場は大盛り上がり
10月31日、日銀が追加緩和を実施しました。実施の時期、緩和の規模とも、マーケットの予想を大きく超えたものとなり、サプライズ緩和と言われています。追加緩和の概要は、次の通りです。
1、マネタリーベース年間80兆円で増加(年間10〜20兆円の増額)
2、長期国債年間80兆円の買入(年間30兆円の増額)
3、ETF年間3兆円の買入(年間3倍に増額)
4、J-REIT年間900億円の買入(年間3倍に増額)
同日、このサプライズ緩和と時期を合わせたように、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、基本ポートフォリオの変更を発表しました。国内株式と外国株式について、それぞれ現在の12%から25%に変更するなど、大胆な変更内容となっています。GPIFの運用資産は約127兆円ですので、配分比率が1%増えると、その資産に1.27兆円の資金が流入するということで、株式市場には大きく好感されています。
これらイベントを受け、日経平均は先週末時点(11月7日)で16,880.38円と、イベント直前の10月30日比で1,222円も上昇しています。11月6日の取引時間中には約7年ぶりに17,000円台を回復しました。これに連れ世界の株式市場も上昇し、NYダウは10月30日の16,974.31ドルから11月7日には17,573.93ドル(10月30日比+599ドル)まで上昇し最高値を更新中です。
このまま一直線に株価の上昇傾向が続くことはない
では、この盛り上がりは今後も続くのでしょうか? 私は、10月中旬、日米株価が大幅な調整を続けていた時、つまり今とは全く逆の状況だった時に、株価の中期予想は、過度に足元のセンチメントに惑わされることなく、経済や企業業績などの本質的要因を重視すべきとし、年内から年始にかけ日経平均は17,000円程度まで上昇すると予想していました。もちろん、追加緩和はないとしての予想で、当時では強気に入る部類でした。
そして今、サプライズ緩和を受けて、私は前月の考え方を踏襲しつつ次のとおり考えています。この考えの基本的背景としては、日銀の追加緩和は明らかに資産価格の上昇と円安に寄与するが、その持続性については賞味期限があること、実態経済への波及効果について明確でないこと、少なくとも雇用者の実質所得上昇などにタイムラグがあること、などがあります。
年内は17,000円超えの攻防が続く?
1、今般の大幅株価上昇は、サプライズ緩和に驚いた内外投資家のポジション調整の占める割合が大きい。ただし、底値は切り上がった感がある。
2、日経平均のPERは16.0倍、NYダウも17.4倍まで上昇しており、警戒水域である(上昇直後に言う人は少ないが、株価が下がった場合、まことしやかに後付けで解説される)。
3、投資家は今や上下両方向いずれかへ動くきっかけを待っている状況であるが、今後リスク要因に大きく反応する可能性が高い。
4、日米他実態経済と日本企業の収益力に大きな変更が生じたわけではない。ただし、円安進行による日本企業の収益力の上昇はあげられる。
5、日米欧の金融政策の各方向性に変化はない。
6、消費税10%判断という波乱要因がある。
7、直接的なプラス効果が大きいのは、ETFとJ-REITの買入額を3倍にしたことであり、日本株とJ-REITの下支え要因になる。
8、GPIFの資金流入規模も、大きな下支え要因である。
9、超金融緩和により不動産、株等に資産バブルが起こる可能性がやや高まった。
以上より、結論は、「年内は17,000円超えの攻防が続き、年度末(2015年3月)に向け18,000円程度を目指す。時々でこれを超える水準に到達する可能性もあるが、その場合は調整が繰り返される。底値が切り上がったものの、ボラティリティは更に高まっている点に注意」となります。
(賀藤 浩徳/不動産投資アドバイザー)