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犯罪者の社会復帰に厳しい現実、求められる支援

JIJICO 2014年11月11日 12時0分

「元受刑者」にも一般市民と同じ待遇を受ける権利がある

先日、刑務所を出所後に身寄りのない人を一時的に保護する更生保護施設に入所していた男が、金を奪う目的で女性を殺害して逮捕されました。施設を出る時期が迫り、退所後の生活に不安を募らせて犯行に及んだ可能性があるとのことです。

法を犯して受刑に至った者は、刑を務めることによって自らの犯罪への償いを終えたことになります。言い換えれば、犯罪者は受刑を終えた時点で、以前と変わらぬ一般市民に戻ったことになります。ですから、「元受刑者」は基本的に他の市民と同じ待遇を受ける権利があることになります。

根拠のない「差別」か、正しい「推測」か

しかし、これは法律的・理論的な話であって、現実には「元受刑者」への差別がさまざまな形で存在するのは否定できません。それは、彼らがいわゆる「前科者」などと呼ばれたりすることにも表れています。

結局、問題は「犯罪歴を持った人をどう見るか」に帰結するでしょう。さらに平たく言えば、「前科者は何をするか分からない、怖い」という世間の眼です。それが端的に表れる一例は職探しで、犯罪歴が原因となって勤め先が見つからないことも珍しくありません。そこでの議論は、「これが根拠のない『差別』なのか、それともある程度正しい『推測』なのか」ということです。

再犯防止に就労支援は効果的

このことを客観的に判定する一つの指標は、「再犯率」(処分後一定期間内に再び犯罪を起こす割合)です。保護観察対象者の再犯率について、法務省の統計では無職者が有職者の約5倍と発表しています。この結果から、再犯を防ぐ一つの方策は刑務所出所者の就労を支援することでしょう。

しかし、問題は有職者でも再犯率がゼロではないことです。ですから、この問題は「社会がどこまでリスクを受容できるか」とも言い換えられます。

「犯罪者」に向けられる社会・世間の認識が問題の根源

もう一つの問題は、再犯率の数字の議論の他に、「犯罪者」全般に対する社会・世間の認識の問題です。つまり、「人は一度でも犯罪者になると、死ぬまで犯罪者と見なされる」ということです。私は、実はこの見方こそが問題の根源と考えます。この見方は、恐らく一般の人に対して、犯罪への予防策として警告的になされてきたと考えられます。その具体例は、「薬物絶対ダメ、廃人になる」や「飲酒運転絶対ダメ、人生棒に振る」などの犯罪防止キャンペーン標語に見られます。

このようなキャンペーンが反復されると、受け手には「犯罪者=回復不可能者(怖い人)」とのメッセージが刷り込まれ、一度罪を犯した者を全て回復不可能の悪人とみなしてしまうことにつながります。

ところが、実際は大部分の犯罪者が条件によっては再び犯罪を起こさずに済んでいます。従って、このような標語は一度犯罪に至った人のセカンドチャンスを奪い、結果的には再犯に誘導しているともいえます。犯罪を自分には関係ないことと受け止めず、一旦失敗した人に社会としてどのようにセカンドチャンスを与えられるかを、各自考えていくのが重要ではないでしょうか。

(村田 晃/心理学博士)

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