ハロウィン定着は日本人に変身願望があるから
米国で民間行事として定着しているハロウィンに当たる10月31日の夜、仮装した若者らで東京・渋谷のスクランブル交差点が占拠されました。その人数は警視庁の予想を超え、宿直を含め警察官120人、警視庁機動隊からは約30人が派遣される事態となったようです。
もともと、ケルト民族のお祭りであったハロウィンは欧州から米国に渡り、ついに日本にも到来したと言えるかもしれません。では、なぜ今になって日本に定着したのでしょうか。それは、欧米人に負けず劣らず、日本人にも変身願望があるからだと言えます。
普段はシャイで目立たない姿を好む日本人
日本人は対外的に、普段はシャイで目立たない姿を好むとされます。電車に乗っていても、大声を発するなど、奇妙に見えることはタブーとされています。変な人には近寄りがたいという心情は共通で、「妙に空いている車両だと思えば、奇異な人が乗っていた」という経験もあるでしょう。「変人」だと判断されれば、見なかったことにされ遠巻きに無視されるのです。
また、街には知らない人がたくさんいるわけですから、常に周りを警戒していれば神経も休まりません。互いにストレスを溜めないように、無害な人と見えるように振る舞います。できる限り無害をアピールするには、同質であることを主張する一般的な格好が適しているでしょう。
ハロウィンが変身願望を持つコスプレイヤーの参加を促した
そんな日本にも、年に数回は無礼講、羽目を外してはしゃいでも容認される日があります。それが、お祭りです。お祭りの期間はどんな格好をしても、変な人とは思われません。子どもはもちろんのこと、大人でも大目に見られます。昔から神輿を担ぐ時には法被に変身しますし、花火見物も浴衣に変身すれば格好よく見られるのです。
こうした変身願望は、コミケ(コミックマーケット)などでの完成度の高いコスプレ(コスチュームプレイヤー)に引き継がれています。しかし、コミケ会場ほどの高度なコスプレとなると、伝統的な祭りの会場では奇異に映ります。これが、ハロウィンならコスプレでも大目に見てもらえるのです。そして、コスプレイヤーにも見て欲しいという願望があります。ハロウィンの魅力はそれだけではありません。コミケ会場にいく勇気がない、潜在的なコスプレイヤーの参加を促す結果にもなりました。
ハロウィン定着の裏には、ある業界の思惑が存在
さて、自作するほどでもないコスプレイヤー予備軍は、どこで衣装を手に入れればよいのでしょうか。そこで、手を差し伸べたのがショッピング業界です。10月初旬のスポーツイベントが終わってしまうと、クリスマスまで2ヵ月近くは主なイベントがありません。
ちょうど、大型イベントを欲していたショッピング業界にとって、ハロウィンは願ったりかなったりの存在でしょう。盛り上がる要素となる起爆剤を必要とする業界、街中でコスプレしたいコスプレイヤー。そして、コスプレイヤー予備軍という三者の思惑が一致し、ハロウィンは定着したのです。
(木村 尚義/経営コンサルタント)