「山崎」が世界1位の評価を獲得。「ウイスキーブーム」再来?
今、大人気のNHK連続テレビ小説「マッサン」。「ニッカウヰスキー」の創業者、竹鶴政孝と妻リタとの生涯を描いたドラマです。二人を取り巻く人間模様も素晴らしいものがありますが、ウイスキーの造り方や基礎知識をよく理解できることにも興味がそそられます。「マッサン」効果で、北海道の余市町にある「ニッカウヰスキー余市工場」は、連日、多くの観光客が訪れ賑わいを見せています。ドラマの人気は、「ニッカ」に留まらず、業界全体を押し上げていると聞きます。
そんな中、ウイスキー業界にとって、さらに追い風となるニュースが伝わって来ました。ウイスキーの本場イギリスで毎年発行されるウイスキーの格付けを担う本「ウイスキー・バイブル 2015年度版」において、「シングルモルトウイスキー山崎シェリーカスク2013:サントリー」が世界1位の評価を獲得したのです。ウイスキー評論での第一人者ジム・マリー氏が付けたポイント97.5点(100点満点)。日本産のウイスキーが、これほど高く評価されるのは初めてのことです。業界も、これらの波に乗り「ウイスキーブーム」再来につなげたいと考えているようです。
「山崎」誕生のルーツに「ニッカウヰスキー」竹鶴政孝の存在も
サントリーの「山崎」が、これほどまで評価される魅力の原点は何なのでしょう。そのルーツを語る上で、「ニッカ」を欠かすことはできません。「ジャパニーズウイスキー」として世界的に知られているのは「サントリー」と「ニッカ」。小さな蒸留所も含めると10箇所ほどありますが、この2社が草分け的存在です。
「サントリー」の鳥居信二郎と「ニッカウヰスキー」の竹鶴政孝。元々、2人は一緒にウイスキー造りを目指し、日本発のウイスキーを世に送り出した仲間です。1929年、国産初のウイスキー「白札」を「サントリー」の前身「寿屋」から発売。その後、1936年、竹鶴政孝が鳥居信二郎から離れ、余市で独自のウイスキー造りをはじめることとなります。この2人がウイスキー業界を牽引し続け、技術的にも品質的にも切磋琢磨していなければ「山崎」も生まれていなかった、と言っても過言ではないかもしれません。
妥協なき思いと美しい自然が「ジャパニーズウイスキー」の魅力に
お酒造りは「農業」の一種と言っても良いほど自然と共生してきました。言い換えれば、お酒造りの立地が、お酒の品質を決めてしまいます。水と風土を妥協していれば、現在の評価もなかったことでしょう。さらに、ウイスキーは「熟成」が良し悪しを決めるのが特徴です。どんなに人気が出ても、需要が急激に上がっても、焦らずじっくりと未来を受け入れる。このことが、ウイスキー造りにおいて大切なところです。
鳥居信二郎と竹鶴政孝のウイスキー造りにかけた熱い思いと、日本の美しい自然が織り成す魅惑の琥珀色の酒。それは、静かな時の流れが生み出す至極の世界。ウイスキー通を虜にする「ジャパニーズウイスキー」は、素晴らしい日本の自然が存在し続ける限り、これからも進化を遂げることでしょう。
ウイスキーを飲んでみたくなりましたか?日本のウイスキーの原点とも言える「山崎」をストレートで飲み、直感で感じてみてください。新たなる発見が、必ずあるはずです。
(鎌田 孝/利酒師)