授乳写真をフェイスブックに投稿。物議を醸す
あるイギリス在住の女性が、我が子に授乳する写真をフェイスブックに投稿したところ、閲覧者がクレーム報告し、ヌードにあたるとして一時写真が削除される出来事が起きたそうです。後にフェイスブックは、授乳は自然かつ美しい行為であるとの見解から、削除したことが誤りであったとして、復活させるに至ったようです。
このことはネット上で取り上げられ、日本においても様々な意見が投稿されています。
法的には、性欲を興奮または刺激させると言えない
画像の投稿は一種の表現行為にあたるものと思われますが、表現の自由は、憲法で保障されています。もっとも、無制限の自由ではなく、公共の福祉の観点から制限を受けることがあります。刑法では、公然わいせつ罪、わいせつ物頒布罪を定めています。わいせつという概念は、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反するもの等と判例で定義されています、具体的な対象が、わいせつであるかどうかは、その時代や文化によって価値観が異なっていくことからも、最終的に個々の裁判において判断されることになります。
さて、授乳はヌードか?ということですが、法的には、わいせつといえるかどうかという観点で考えたとき、性欲を興奮または刺激させると言うことはできないものと思われます。もっとも、授乳は自然かつ美しい行為であるから、公然に堂々と行ったり見せることを善しというかどうかは、論理的帰結にはならないでしょう。そもそも、女性が裸で胸を公然に見せることは性的意味合いを持つため、わいせつの概念にあたる行為となりえ、その行為は制限を受けます。
マナーの問題として捉え、画像の投稿についても配慮すべき
では、授乳自体が問題行為ではないからといって、授乳に伴って胸等が見えても人に迷惑をかけることにはならないといえるでしょうか。例えば、授乳にあたり、乳房や乳首等が他人の目に触れる態様であった場合、その光景に不快感を感じる人は少なからずいるでしょう。それは、女性の乳房といった性的羞恥心の対象である部位が、そのものを見せる行為としてではなくても、授乳に伴って見えてしまっているということに対しての不快感と推測されます。
他人に不快感を与える行為になりうる以上、マナーの問題として捉え、授乳の場所や羽織るものの用意等、態様を考えるべき行為であるといえると思います。画像の投稿についても、子育て中ではない等、およその他人が見ても不快感を感じることはないかどうかに配慮するべきでしょう。ここは価値観が分かれるところかもしれませんが、そういう意味で冒頭の事案は一考の機会になると思います。
(柳原 桑子/弁護士)