LINE普及の要因に挙げられる「スタンプ」人気
LINEといえば、もはや一般的なコミュニケーションツールとなりました。LINEを普及させた要素の一つが「スタンプ」でしょう。従来のメールやメッセージでも(>_<)や (^^)といった、いわゆる顔文字はありましたが、イラストとしてさらにバラエティ豊かになったのがスタンプです。
例えば、「怒っている」と相手に伝えるとき、「ふざけるな」や「怒ってるんだ」と言うのでは身も蓋もありませんが、ネコが拗ねていたり、犬が吠えていたり、満月が真っ赤になって怒り顔になっていたりするスタンプを送れば、感情の微妙なニュアンスを伝えつつ、角も立ちません(誤解されるリスクもありますが)。
作者サイドでの二次利用についてLINEは関わらない
さて、そのスタンプ、今春から、一般の人が作って売れるようになりました。LINE側の審査があり、暴力的なもの等は通りませんが、受けるツボを押さえたスタンプならデザインの素人が作っても売れる可能性があります。
では、このLINEスタンプ、著作権はどうなっているでしょう(※)。
まず、売渡しなのか、ライセンスなのかで言えば、ライセンスです。つまり、LINEに売ってしまうわけではなく、利用権を許諾します。このライセンスは独占的なものではないので、作者は独自にイラストを利用したり、LINE以外にもライセンスできます。例えば、自作のスタンプイラストを主人公にしたマンガを描いて売っても構いません。あるいは、ぬいぐるみメーカー等にライセンスして、スタンプを3D化したぬいぐるみを製造販売させることも可能です。こうした作者サイドでの二次利用についてLINEは関わらないので、LINEに収益を分配する必要はありません。
LINEが再許諾した相手に対しては著作権侵害を主張できない
ただ、LINEへのライセンスは再許諾を含みます。つまり、LINEはLINE独自でさらに第三者に利用許諾ができるわけです。おそらく、これは上記のような二次利用を想定したものではないと思われますが、LINEが再許諾した相手に対しては著作権侵害だと主張することはできません。
また、著作権には著作者人格権もあります。これは作者の氏名を表示させる権利、著作物を勝手に改変されない権利ですが、LINEへのライセンスの場合、これらの著作者人格権は行使しない契約になります。つまり、名前を表示しろと要求したり勝手に改変するなとは言えません。スタンプの性格上、これは仕方ないでしょう。
LINEのアクティブユーザーは2億人程度。大体、1セット100円で販売され半分が作者の取り分になります。「スタンプ長者」を目指してみるのもおもしろいかもしれませんね。
※詳細は「LINE Creators Market利用規約」参照。上記はその一般的解釈ですが、規定が変更されたりLINEが上記とは異なる解釈を採る場合等に本稿作者が責任を負うものではありません。
(小澤 信彦/弁理士)