38年間におけるエボラによる死者数の3倍に
今回のエボラ出血熱による死者は約5,000人(2014年10月30日現在)。1976年の発見以降、38年間におけるエボラによる死者数の3倍に達しました。これまでの大流行は非常に限定的なものでしたが、今回は様々な要素が合わさり、流行を制御不能にしたといわれています。また、医療従事者にも悪影響を及ぼし、医療システムの崩壊をも招いているとされています。このような影響を鑑みると、大規模な国際的取り組みは喫緊の課題と考えられます。
現在、国によって状況はかなり異なるようです。シエラレオネでは流行はまだ悪化しているようですが、リベリアでは一部の地域で沈静化のサインが出てきたといわれています。伝播は世界中のどの国でも起こりえて、日本は衛生面、感染制御とも、ある程度の基準を満たしているとされてはいますが、同レベルの米国テキサスでも死者が発生していることなどを考えると、必ずしも安全とはいえないかもしれません。日本国全体で、より良い感染制御の訓練を加速すべき時期に来ていると考えられます。
アビガン錠、エボラ治療薬として国際的に承認される可能性
現在は、患者の隔離、生命維持、水分補給、接触者の検疫措置、環境改善などの原始的な形でしか封じ込めはできていません。そのような中で、インフルエンザ治療薬「アビガン錠」が注目を集めています。アビガン錠は、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、他の抗インフルエンザ薬が無効または効果不十分な場合に使用するという条件付きで、2014年3月に製造販売承認を取得しました。
このアビガン錠、現時点でエボラ熱には未承認薬であるものの、これまでにフランス、スペイン、ノルウェー、ドイツの4か国で4人の患者に投与され、全員の症状の回復が報告されたました。その結果、年末から年明けにもエボラ治療薬として国際的に承認される可能性があるそうです。
製薬メーカーが抗インフルエンザ薬として備蓄しているものを、エボラ出血熱用の投与量で換算すると約2万人分になり、原薬としてさらに30万人分程度の在庫を保有しているとされています。
未知の副作用が出る可能性も否定はできないが、その存在は光明
エボラ出血熱に対しての特効薬やワクチンがない現在、このような効果が期待できる薬剤の存在は光明でもあり、日本の医薬製薬技術の高さには驚かされます。しかし、まだまだその効果に関しては未知数なところもあります。多数例での投与経験のないことも含めて考えると、未知の副作用が出る可能性も否定はできません。
ワクチン開発も進行中とのことではありますが、今後さらなる治療薬を含めたエボラ対策を全世界的に行っていく必要があるのは言うまでもありません。早急な封じ込め政策が功を奏することを期待するところです。
(佐藤 浩明/消化器内科専門医)