なかなか上がらない有給休暇取得率。厚労省は消化義務化を検討
厚生労働省が11月13日に発表した平成26年就労条件総合調査によると、2013年に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者1人平均18.5日。そのうち労働者が取得した日数は9.0日で、取得率では48.8%(前年47.1%)。前年からすると僅かながら上昇しましたが、政府目標である「2020年までに70%」の達成には、まだまだ課題が残る結果となりました。
厚労省は以前より、年次有給休暇の消化を企業に義務づける検討をしています。現行の制度は社員側から有給休暇の取得を申し出ることになっていますが、社員側の65.5%が「職場への配慮から取得をためらっている」という調査結果があり、取得率が伸びない大きな要因だと考えられています。
また一方で、「有給休暇を取りたいけど取れない」という不満は、パフォーマンスの低下を招く恐れがあるため、社員自身の意思で有給休暇を取得できる環境づくりは、企業にとっても社員にとっても望ましい状況であるといえるでしょう。
「休まずに働く人がエライ」を変える。計画的付与制度も有効
有給休暇の取得率を向上させるためには、まずは社風を変えることが必要です。企業によっては、「休まずに働く人がエライ」という雰囲気がある企業もあります。そういう雰囲気であれば、取得しづらいのは当然です。このような雰囲気を変えるために、企業側が有給休暇を計画的に付与することも第一歩としては有効でしょう。
例えば、夏休みや冬休み、事業に繁忙がある企業では閑散期に、企業側が計画的に各社員に有給休暇を割り当てて付与する制度(計画的付与制度)などです。この計画的付与制度を取っ掛かりとして、有給休暇を取得することが当然だという雰囲気につながれば、社員が自らの意思で取得することも容易となっていくでしょう。
「責任を果たし休みもしっかり取る」。社員の意識変革が必要
しかし、仕組みとして取得を促進するよりも必要なことは、社員側の意識変革です。最もうまくいかないのは、権利だけを主張して責任を果たさない社員が増えることです。これは企業経営の面でもデメリットですし、長期的に見ると社員側にも悪い影響を与えます。
仕事というのは、責任を果たすからこそ達成感や充実感を感じられるものです。ただ単に権利だけを主張するような仕事の仕方では、仕事が苦役になってしまいます。そういう職業人生は、不幸と言わざるを得ません。
したがって、社員一人ひとりに、有給休暇を取得するために今まで以上に生産性の高い仕事をして「責任を果たしながら休みもしっかり取る」という意識を持ってもらうことが、とても大切なことなのです。
(福留 幸輔/組織・人事コンサルタント)