賛否分かれる「年賀状に子どもの写真」
最近、子どもの写真を掲載した年賀状の賛否をめぐる論争が絶えません。「毎年家族の近況を知らせているので」「いつも子ども中心の生活をしているから」「ビジュアルの方が好感を持たれるから」といった賛成派と、「子どもとは付き合いがないから」「身内でもない子どもには正直興味ない」「子どもがいない人にとっては不快感を与える」といった反対派、さらに「どちらでもよい」との無頓着派と様々な意見があります。
すべての人を満足させる答えは無いようですが、私は反対派の一人です。
年賀状の趣旨から考えて、子どもが主役ではない
ポイントは年賀状を受け取った相手がどのように感じるかですが、感じ方は住人十色。よって、年賀状の趣旨から考えてみたいと思います。
四季が明確に分かれている日本では、暑い時期と寒い時期にはお世話になった人や目上の人のところに出向き挨拶をしていた習慣があり、中でも寒くて新しい年を迎える時期の挨拶をとても大切にしていました。しかし、都合により挨拶回りができない人もいます。そこで、挨拶回りを簡略化して書状で挨拶したものが年賀状の起源といわれています。
そして明治になり、郵便制度の普及により一般庶民にも年賀状が急速に広まり現在に至ります。したがって、このような由来からすれば、年賀状はイラストよりも挨拶の言葉に重きを置くべきと考えます。加えて挨拶の内容も、近況報告もさることながら、新年を寿ぐ言葉と、相手を気遣う思いやりの言葉が欠かせません。
さらに正月は、ご先祖様の里帰りの日です。家族揃ってご先祖様と共に新年を寿ぎ、ご先祖様をお持て成しする日ですから、子どもが主役ではありません。
「子どもが主役」の行事にこそ、大切な人に記念の写真を送る
それでは、子どもの愛らしい写真はどうすれば良いのでしょう。とっておきの方法があります。日本は、世界屈指の年中行事が多い国といわれていますが、子どもの成長を祝う儀式も多々あります。子どもが誕生して7日目には赤ちゃんの健やかな成長を祈念する「お七夜」の祝いがあり、生後1か月前後には「お宮参り」、続いて「お食い初め」「初誕生日」、さらに「初節句」「七五三」「入園・入学祝い」「卒業祝い」などと続きます。
これらの行事を上手に利用して、親戚や大切な人に記念の写真を送られたら良いでしょう。この時こそ、子どもが主役になるため、大切な人から喜ばれること請負です。
伝統行事には必ず由来がある。簡単に趣旨を変えるべきではない
パソコン、スマートフォン、年賀状のアプリなどの急速な発展とともに年賀状の在り方が変わるのは歪めません。しかし、マナーには不易流行的側面があり、「なぜこうなるの?」という合理的な理由が存在します。また、何千年も何百年も脈々と続く伝統行事には必ずその由来があります。正月や年賀状しかりです。
「楽しければ良い」「時代の流れだから」と簡単に趣旨を変えるべきではありません。いかに時代が変わろうと、それらの理由や由来を大人が正しく理解し、次世代に伝えていきたいものです。
(平松 幹夫/マナー講師)