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廃止に傾く終身雇用に歯止めをかける要素

JIJICO 2014年12月1日 15時0分

リストラ策が常態化する現在、終身雇用の存在は影を潜める

終身雇用は、かつて三種の神器の一つでした。日本型雇用慣行は労働者にとって安定性があるばかりでなく、企業にとっても人材成長、企業秩序の形成、業績への貢献など、長期的戦略の点で利点があり、人材確保に貢献していました。しかし、バブル経済崩壊後、日本企業はこぞって人員削減策を実施するようになりました。現在、グローバル競争において収益の安定成長を前提とする賃金の維持・雇用保障を約束することは、困難な時代になっています。こうした現状を背景に、企業は人件費を思考するようになりました。

法的には、業績不振だけではなく経営合理化の理由であっても、実態によってリストラ策は是認される可能性があります。しかし、労働問題に発展するリスクを含んでいます。それでも、リストラ策が常態化している現代において、終身雇用の存在は影を潜めるようになりました。

リストラ策は経営戦略の一つという位置付けに

近年のリストラ策は、経営不振や合理化など、特定理由の有無がさほど意識されず、経営戦略の一つとして位置付けられているようです。希望退職の募集や不利益緩和を措置(退職金の上積みや就職斡旋など)するなどのリストラ手法は類似しているものの、その目的は企業戦略から来ています。

例えば、「全体的なコストアップが見えている」「貢献度の低い社員が目立つようになった」「競争必勝のためには人材を入れ替える」など、目的は企業状況で異なります。また、非正規雇用を希望する労働者層の増加は、企業にとっても人件費の変動費化の点でマッチングしました。結果、非正規雇用労働者で雇用人材の相当な割合を運用することを、戦略的に推進させることにもなっています。

20歳以上の労働者で終身雇用を支持する割合は過去最高水準

一方、社会的には2007年の「ワーク・ライフ・バランス憲章」により、仕事をして賃金を得ると同時に、長時間労働を回避し、労働者個人の生活を確保していく、いわゆる「仕事と家庭の調和」が企業に要請されています。

また、労働政策研究・研修機構の「第6回勤労生活に関する調査(2011年)」(平成25年5月公開)によれば、20歳以上の労働者で、終身雇用を支持する割合は87.5%以上あり、過去最高水準にあります。とりわけ若年労働者(20~30代)において、その支持割合が伸びている傾向にあります。

終身雇用廃止は加速しているものの、維持に傾く可能性もある

さらに、日本では人材流動化の仕組みが未成熟なことも、終身雇用が弱まる傾向に歯止めをかける要素になっているとも考えられます。終身雇用廃止の傾向は依然として続いていますが、これらの事実は、今後雇用の安定を考慮した人材登用を重視する必要があることを物語っています。

それでも、利益に貢献しない人件費を削減したいという企業傾向は、ますます強まることが考えられます。その点では、企業は労働者個々人の雇用の安定的要素を探りつつ、全体の人件費総枠を収益とマッチングする態様を模索することにもなります。このように、個々の企業のリストラ策や非正規雇用の多用からは、終身雇用が弱まっている背景が見られるものの、社会政策や若年労働者層の状況を考えれば、終身雇用の維持に傾く可能性もあります。

(亀岡 亜己雄/社会保険労務士)

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